悲しみ、嫌悪、絶望、怒り、恐怖、殺意。
深く刻み込まれたこれらの感情は連鎖している。
どれかひとつの感情が刺激されると、他の5つの感情まで大きくなっていくのだ。
セドナのおかげで今は収まっているが、また大きく膨らんでしまうかもしれない。
特に、主であるティファニーの身に何かあったら。
もしかしたら雑兵人形だった頃のように、暗い感情に呑み込まれるままに暴れてしまうかもしれない。
そうして多くの人間を傷つけてしまったら……。
考えるだけでまた胸がざわつきそうだったので、ニコは首を振った。
物事を悪い方向に考えるのはいいことではない。
「すみませんでした、もう大丈夫です」
「本当だな?」
「はい、ケセラも怖い思いをさせて申し訳ありませんでした」
「だ、大丈夫だよ、僕は平気だから……」
未だに鹿の首から離れられないでいるケセラの表情は、とても大丈夫そうには見えなかった。
青ざめ冷や汗をかきながらも笑顔を浮かべている。
「本当かよ」
「信用していませんか?」
「ちょっとだけな」
「嘘ですね」
「正解、全く信用してねえ。
もうあんな死にかける思いはしたくねえからさ」


