やや棘のある言い方だったが、恐らく本人は無意識のうちだろう。
セドナはやり過ぎたかと少しだけ後悔した。
しかしすぐに
(いや、あんくらいやらないとこいつは目を覚まさなかったな。
アホラリマーだってぶん殴らねえと自覚しないぐらいときあったし、こいつはそれ以上に重症だし)
と考え、自分の行動を肯定的に捉え直す。
そしてニコの言葉には何も反応しないで話を進めた。
「今は正気に戻ってんのか?」
「恐らくは」
「何だよそれ、はっきりしねえ言い方」
「あいにく、ぼく自身の中でもはっきりしていないものでして」
セドナに頬をつねられたがあまり気にしないで、ニコは左胸を見遣った。
もうざわつきは収まり、靄もなくなって視界は澄んでいた。
あの不穏な黒い靄には見覚えがある。
人間と同じ姿になる前、いくつもの戦場で経験してきた。
それに似ている。
その時に教えられた6つの暗い『心』がざわめいていたのだ。


