セドナはすぐ目の前まで移動すると屈みこみ、無言で右手をあげる。
そしてそのまま、表情を変えないでニコの頬を打った。
「ひゃっ」
ケセラが後ろで首を竦めたが無視する。
人間の顔と同じ感触が手のひらに走ったが、手ごたえはそれより軽かった。
ニコが首を元に戻す。
「痛いじゃないですか」
「お前に痛覚なんか存在しないだろうが。
そういうのはいいから一旦落ち着け、深呼吸でもしろ。
冷静にならねえと、気づけるモンも気づけなくなっちまうぞ。
この状態でセイクリッドたちのとこに突っ込んでもティファニーは助けられねえ、殺されかねない。
あいつを助けたいならまずは頭を冷やせ」
「け、ケンカしないで……」
「ケセラ、これはケンカじゃねえからそんな心配すんな」
もう半べそ状態のケセラにセドナはきっぱり言った。
こうでもしなければニコを正気に戻せないと考えての行動である。
かなりの荒治療だが、効果はあった様だ。
ニコは打たれた頬に手を当てた。
自分に痛みは感じられない。
だが、衝撃によって目がはっきりと覚めた気がした。
彼の言う通りだ、こんなにがむしゃらになって追いかけても、事態を難航させるだけにしかならない。
ティファニーを確実に救うには、相手の隙を突くしか方法はないというのに。


