親方はずいぶんと頭に血がのぼっている様子だった。
3人が目配せして頷きあっているのに全く気づいていない。
自分が怒りをぶつけるべき相手を間違えていることにさえも。
タンザは素早く思考回路を回転させ、まだ何か言っている親方の肩を叩いた。
「親方親方、それ言われたの俺たちじゃねえっすわ。
向こうに部品を届けに行く様に頼まれた先輩たちっすよ」
「そ、そうなのか?」
目を白黒させる親方にハックは頷いてみせた。
「そうですよ。
だって……俺たちにそんなこと話したら、仕事も足止めも放っぽってティファニーを助けに行くってこと、先生たちは知ってますからねぇ」
「っそ、そう、か……」
親方の顔が、今度は赤から青へと変化する。
青を通り越して、むしろ白い。
叱る相手を間違えたという表情に、タンザはさらに追い討ちをかけた。
「あ、ちなみにっすけど、今の先輩云々は嘘ですからね」
「う、嘘、嘘か……はは、わ、分かった。
い、いきなり怒鳴って悪かったな、ははは……」
「ちょっと待った」
無意味に笑ってその場から逃げようとジリジリ動く肩を、細い手がガシっと捕まえる。
彼が振り向いたそこには、手板を片手に天使の微笑みを浮かべるリビアがいた。
探す手間が省けたと、親方に聞こえない声で呟く。
「今の話、もっと詳しく教えてもらえます?」
手板の先では、兎と猫のぬいぐるみが鎌と鉈の刃を不気味にぎらつかせていた。


