あっという間に遠ざかった牡鹿を見送って、まずタンザが息を吐いた。
それに二人も加わる。
「……まさかそんなことになってるとは思いもしなかったな」
「ああ……というか、ニコが行って大丈夫だったのか?
何かあいつ、見るからにヤバそうな雰囲気だったじゃん」
腐れ縁の言葉に、先ほどのニコの姿を思い出してみる。
どこに向いているか分からない目つきに、異常に恐怖を掻き立てられた。
殺される――タンザは漠然とそう感じて顔を背けた。
根拠のない怯えだと情けなく思うが、あの瞬間はそう思ってしまった。
「間に合ってくれよ〜……って、あれ誰だ?」
顔の前で手をすり合わせていたハックだが、ふとこちらに向かってくる人影に気づいた。
大工の親方であった。
かなり焦った顔つきであると遠目でも分かる。
「……ああ、あれは大工の親方さんだぜ。
忘れ物でもしたんじゃねえの?」
「誰だっていいわよ。
そんなことより、あたしたちはあたしたちで動くわよ」
「動くとハドウいう意味ダ?
マだ大工タチカラ来てくレトいう指示は出テいないガ」
「そうじゃないわよ、おバカ」
リビアはレムリアンにデコピンをすると、悪そうな笑みを浮かべた。
青と金のオッドアイに強い閃光が走る。


