結局、ニールの行動はすべて仕立て屋に報告され、彼の妻が連れ戻しにやって来た。

夫が憲兵につかまれば、商売は上がったりだ。妻の必死の懇願にも揺るがないザックに、ケネスが割って入り、話をまとめる。

結果、憲兵に突き出さない代わりに、クリスの怪我に対する見舞金の支払いと、伯爵邸の草むしりという実地労働を三ヶ月行うことで話はまとまった。

「本当に申し訳ございません。うちの亭主が」

「うん。まあ。男というものは多少余裕がないと窮屈さを感じてしまうものだよ。首根っこ掴むのもいいけれど、少し緩めてやることが肝要かもしれないね」

年の割におっさん臭いことをいうケネスに苦笑するおかみは、次にクリスに向き直った。

「お恥ずかしいですわ。こちらのお嬢さんにも本当にごめんなさい」

ぺこりと大人に頭を下げられ、クリスは戸惑った様子でオードリーにしがみついた。

「……いいえ。そもそも私がクリスをひとりにしたのもいけなかったんです」

オードリーは苦笑しつつ頭を下げた。

嵐のような仕立て屋夫妻が去り、ロザリーも仕事に戻ろうとしたが、チェルシーが戻ってきていないことを思い出した。探しに行く許可をもらおうかとレイモンドを見上げると、彼はオードリーのほうをチラチラと見ながらも、言葉にするのをためらうように何度も口を開けては閉じていた。

クリスは無邪気に二人の間を行ったり来たりしているが、オードリーは彼と目を合わせるのをためらっているようだ。