「……おう、国王!!」

ロバートの大きな声に、ハッと我に返る。

「はっ、ロバート!」

「何を呆けているのですか!そろそろ儀式が始まるのですよ!?シャキッとして下さい!シャキッと!」


大聖堂にある応接間。

そこの椅子に、私は腰を掛けていた。



一通り挨拶を済ませた後、城の隣にあるこの大聖堂で、ミネアがこの国の者になる為の儀式と、婚姻を結ぶ儀式を行う為に、王の間へいた全員が移動をしていた。


ミネアはこの国の王族服に着替えなければならず、それまでの時間私はこの応接室で終わるのを待って
いた訳だが……。

正直、ここまでの記憶が定かではない。


大聖堂へと向かう際、ロバートにミネアをそこまでエスコートするように促され、手を差し出した所まではなんとか覚えているのだが、ミネアが私の手の上に手を重ねた瞬間に、触れられた!という喜びからか、記憶がぶっ飛んでしまっていたのだ。



まさか自分がそこまで舞い上がってしまうとは思わなかった。


何か失敗でもしていないかと、今更ながらに不安になるのだが、もしそういった事があれば、今頃ロバートが説教のひとつでもしているだろうし、多分エスコートは滞りなく行えたのだろうと思う。



だが、定かではない記憶の中でも、周りにいた侍従達がどうも笑いを堪えたような顔をしていたのが、やけに気になって記憶に残っているから、多分、私を知っている人間から見たら、不自然な動きをしていたのだろう。



私とした事が……。

たったひとりの女に、ここまで心乱されるとは……。