ケータイ小説 野いちご

かさぶた

かさぶた
止血









式が終わり、あちこちに泣き顔が溢れている。

そして、それと同時に笑顔も。



卒業するということは、悲しみも喜びも全部含まれていることなのね。



「岡村くん」

「委員長……」



ぼーっと空を見上げる彼の隣に立つ。

式が終わって、生徒会の人たちが片づけを始め、気がつけば体育館の中に岡村くんの姿はなかった。



体育館裏で見つけることができて、少しほっとする。



「行きましょう」

「……でも、さ、」

「いいから行くのよ!」



ぐいっと強く背を押す。



「うわっ」



先生に片づけを手伝ってくれと言われたのに、私、断ったのよ。

なんだかんだでいつも断らなかったのに、初めて無理ですって言ったのよ。



あなたのためなら私、……きっとなんでもできるの。



動きそうにない彼の手を引いて、走り出す。



いなくなる前にどうか。

……どうか、間に合って。







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