「あ」

「ん、どうした?」



落ちたりんご飴は拾って近くのゴミ箱に捨て、他も見ようと歩き始めて。

そして、早々に足を止めた夏目。

視線の先には、ヨーヨー釣りだ。



「やりたい?」

「え、ううん、違うの!
わたし、1度もヨーヨー釣りで釣れたことがなかったから見てただけ!
あんまり持ちもの増やしちゃだめだし、うん、気にしないで」



顔の前で手を大きく振るから、浴衣の袖がゆらゆらと揺れている。



「1度も?」

「え?」

「1度も取れたことないの?」

「あ、えっと、まぁ……」

「じゃあ俺が取らせてやる」



にっと笑って屋台に近づいて、おじさんに「一回させて」と声をかける。

きょとん、としている夏目にこよりを握らせ、ストンとしゃがませた。



「夏目はどれが欲しいわけ」

「え、えと、あの水色の……?」



オッケーと軽く答えて、指で突いて近くに寄せる。



周りの小学生たちがちらりと俺たちに視線をやる中。

俺もしゃがみこんだ。










────夏目を抱えるようにして。