沖田 円さんのレビュー一覧
この物語に出会えてよかったと、心から思います。 人と、人と同じ姿と心を持った、けれど決して人ではないモノのお話。 登場人物たちの語る言葉ひとつひとつが、考える心ひとつひとつが、透明なしずくのようになって沁み込んでくるようでした。 決して綺麗ではない物語だけれど、読み終わったあとに感じるのはなにより柔らかな彼らの愛情と、遥かな希望。 自分がここに在る意味を思いました。 消えてしまっても世界になんの影響も与えないとても小さな命だけれど、それでもここに在る意味を。 物語を追いながら、“彼ら”と共にそれを思い、最後には涙を流し、そして笑って、いつかの奇跡を願いました。 いつまでも大切にしていたい作品です。 多くの人に読んで頂きたくもあり、自分だけの中にこっそりしまっていたくもあり。 そう思える、これほど愛しい物語を、見つけられたことに感謝です。
このお話の恋のお相手は、スマホの恋愛アプリの王子様。 ヒロインは…失恋のショックで2次元にのめり込んだ女の子? いやいや違う。失恋のショックで凹んでたときに、突然インストールされたハニーとキラキラの恋した女の子。 設定はちょっとファンタジーですが、中身はごくふつうの、まっすぐなひとつの恋物語。 夏で、暑くて、甘くて、ときどきしょっぱい。 そしてめいっぱい輝いてる。 キラキラした、あの夏の何かが起こりそうな、不思議とワクワクしてくる気配がずっと胸の内にありました。 たぶん、真冬に読んだって夏を思い出すんだろうなあ。 それからきっと、ずっと側にある。 青葉と楓が過ごした日々。乱反射する太陽と、海と星が綺麗な季節。 等身大な恋だったからこそ、まるで自分の思い出みたいに側にあるんだと思います。 キラキラキュンキュンを存分に味わいたい方、オススメ。 ぜひご一読を。
静かな海の中を、ひとり泳ぎ続けているようでした。 失踪した同居人「歩太」 歩太の妹を名乗る「野中七海」 そして僕、「歩夢」が野中七海と共に、歩太の軌跡を辿りながら紡がれていく物語。 『孤高の魚』とは、とても秀逸なタイトルを付けられたなあと。 空気を吐き出す音だけを聞きながら、時折光る群青の海をひたすら彷徨い続けるイメージがずっと頭にありました。 とにかく読んでみて欲しいと、言うほかありません。 「最後」とは言えないラストまで、彼らが歩み、考え、呼吸をし続けた日々を感じて欲しい。 生きること、というよりは、他人と繋がり合うことの意味を思いました。 人はどこまで自分の為、そして他人の為に生きられるか。 彼らがこの物語の中で考えだし、そしてこれからも考えていくことを、わたしもこれから共に考えていくんだと思います。 名作に巡り会えました。ぜひご一読を。
信じていた人に裏切られた。 大事な居場所を失った。 何も見えない真夜中の闇で、小さな光を、見つけた。 深く付けられた傷がきっかけで心を閉ざしていたゆず。 そんな彼女に一筋の光を見せたのは、一通の間違いメールだった。 きっと誰だって、いつかはまっすぐに前を向けないときがくる。 それを乗り越えられるか、どう乗り越えるかは、その人の心次第だろう。 ゆずには支えてくれる人がいたけれど、きっともう一度前を向けたのは、その人たちの力じゃなく、“前へ”という強い思い。 だからこそみんな彼女を支えた、だからこそみんなその手を引いた。 だからこそ、その一歩を一緒に踏み出す、仲間が隣に居たんだろう。 大嫌いになったのは、大好きだったから。 悩んで迷って傷付いて、それでも暗闇の向こうに踏み出せたら。 いつか見えるかもしれない、眩しいほどに、綺麗な夜明け。 立ち上がる勇気をくれる一作。 ぜひご一読。
夢に見たのは、鮮やかな青の空。 その中に飛び込めたらどれだけ素敵なことだろうって。 こんな汚れた世界から抜け出せれば、どれだけしあわせだろうって。 だけど、見上げれば浮かぶのは、青灰色の歪んだ空。 醜くて、淀んでいて、鮮やかな色など浮かべていなくて。 嗤われて、騙されて、もがきながら悩んで、そうしてみんな生きていく。 互いに離れた場所で寄り添いながら、だけど誰よりも依存して、気付かれないように支え合っていたふたり。 とても純粋で、繊細で、だけど何よりも強い絆には、少し羨ましさも感じます。 笑って生きるには時々辛い世界だけど、笑うことよりも大事なものは、きっとすぐ側に在る。 それはこの世界でしか見つけられないもの。 素敵な夢の中なんかには在りはしないもの。 そして、その手の側で見上げた空は、きっと、今までとは違う空。 素敵な作品でした。 ぜひご一読。
君を見つけたのは、きっと偶然なんかじゃなかった。 小さな顔と長い手足、躍るような指先はいつも華やかに色付いて。 穢れない純白な君は、声を知らない、僕のミューズ。 本当に伝えたかったのは言葉なんかじゃない。 本当に知りたかったのは君の指先の声なんかじゃない。 自分の心を知って欲しくて、君の心を誰よりも側に置きたくて。 誰にも見せない君の笑顔を、たったひとりで見たかった。 大好きな人には、すべてを自分に見せて欲しい。 だけどそれは難しくて、だって好きだからこそ、見せたくはない部分もあって。 それでも、その全部をひっくるめて、それは自分の“色”だから。 さらけ出して、抱き締めて、そして見せた笑顔はきっと、誰よりも綺麗に決まってる。 誰もが誰かのたったひとりのミューズになれる。 大好きな人に会いに行きたくなるキラキラとした素敵な1作。 ぜひご一読。
後悔しないで生きるなんて無理な話。 ああしとけばよかった、やめとけばよかった。 何度も思って、何度も足を止めて、後ろを振り返って。 今笑えないのは、全部あの時のせいだって決めつけながら。 忘れた振りだけして、前を向いてるつもりでいて。 だけど、あの時も今もこれからも。 その道を辿るのは、ぜんぶ自分の体だから。 悩んで苦しんで逃げて後悔して、それが今にも続いていたって。 すべて自分の選んだ道で、その先に、今の自分がいる。 「後悔」も、大切な自分の想いのひとつ。 ならそれも抱え込んで、反省して、これから少しずつ変えればいい。 過去を変えることはできなくても、未来ならきっと変えられる。 そしてそれに気付けば、きっと「今」も、変わるはず。 今の自分を見つめ直すきっかけをくれる物語。 最後の最後まで、大切に読んでほしい。 ぜひご一読を。
突然の訪問者に導かれ辿り着いたのは、美しい街並みの夢の都「朱天楼」 灰色の空が見下ろすその場所で、 藍火はたった一瞬の、だけど永遠に忘れない、 とても大切な時を過ごした─── 人は誰でも、何かを抱えて生きているもの この作品の世界で生きる人たちは、みんな心に大きな重荷を背負っていたけれど 大なり小なり、その「何かを背負って」生きているという意味では、誰もが彼らと同じなのだと思う。 たったひとりでそれを抱えて、晴れない空をいつまでも仰いで だけどそれではいつまでだって、濁った景色は消えないから みんなで分かち合えばいい 分かち合えないのなら、一緒に傷ついて泣けばいい たったそれだけのことだけど、たったそれだけのことで きっと、誰かの空は、青く晴れる。 灰色の世界で、だけど七色にきらきらと輝くような素敵な作品。 ぜひご一読を。
あることが原因で不登校になったまま迎えた中学二年の夏休み 千鶴は、祖母の病室で、不思議なひとりの少年と出会った そこから始まる、過去と現在、そして未来を結んだ、命と絆の物語─── もしも、明日の命さえ保障されていなかったら いつ、大切な人が消えてしまうかわからない世界なら わたしたちは一体なにを思い、生きていくのだろうか 明日があるのは当たり前のことじゃない 差しのべられた手を拒んだその瞬間に、なくなってしまう、ものかもしれない それに気付くのは難しいけど、気付いたならば、大事にしたい 苦しんで、泣いて、顔を上げられなくなったとしても、立ち止まって、考えて、涙を流し終えたら、きっとわかる 一緒に歩いてくれる人たちと、愛くるしいほどに、大切な今 命の尊さを、胸に深く沁みこむストーリーとともに教えてくれる物語 ぜひご一読を
いつも傍にいたあいつ いつも傍にいたあの子 この関係が、ずっと続くと思っていた── きっかけはふとしたことで。 それはとても些細な、だけどとても重要な心の変化。 変わることは、失うこと? ちがう、そうじゃない。 今いるここにさよならをして、一歩前に踏み出すこと。 それはきっと、新しい旅立ち。 未来を変えることは怖いけど、それでも今しか変えられない。 今が過去になる前に、変えられなくなる前に。 勇気を出して、一歩踏み出せ。 そうすればきっと、何かが変わる。 変わった今は、いつか綺麗な過去になって、ずっと先のきらきらと光る未来まで、支え続けてくれるはず。 甘酸っぱい青春の一ページ。 悩んで、泣いて、たっぷり笑って、一息ついて。 そして、ゆっくりと前を見つめる勇気をくれる、そんな素敵な作品でした。 ぜひご一読を。
退屈で平凡な日常 悩みはあっても楽しみはない億劫な毎日 見えない未来の姿 この世界から抜け出せば、何かが変わると思っていた だけどきっと本当の煌めきは、 そんな日常の中に埋もれているのかもしれない─── 少年少女がぶつかる、迷いや葛藤や決意。 ありえない非日常を舞台に、だけど何よりもリアルに描かれるそれは、読み手の心にも直球でぶつかってきます。 悩んで、迷って。 いつか笑うために、泣きながら、決意して。 毎日を変えるための、自分を変えるための、引き金はいつも、自分の手の中に。 様々な想いが込められた素敵な作品。 願わくば、彼らの未来が綺麗な愛すべき日常でありますように。 ぜひご一読を。
頑張って、努力して。 前を向いて背伸びするのは悪いことじゃないけど。 それを諦めるのも、悪いことじゃないと思う。 疲れたなら休めばいいし。 痛いなら捨てればいい。 時々なら、逃げたっていい。 立ち止まって深呼吸して。 顔を上げてお月様が見えて。 そしてもう一度笑えたら。 今度は自分のペースで、進んでみればいいだけ。 誰かを救おうなんて、そんな大それたことは思わないけど。 せめて何気ない一言を、掛けてあげられるくらいの人間でいたい。 心に「クツズレ」が出来てしまったあなたに。 是非読んでいただきたい作品です。
突然絵本の世界に迷い込んだうらら 記憶を失くした彼女 そして、4人の少年たち 黄金の道を辿り 失くしたものを取り戻すため 大切な願いを叶えるため 彼らの冒険が始まる── 生きていく中で出会うのは 決して楽しいことばかりじゃない ひとりで抱えるには重すぎて 前に進めないこともある けれど、きっと 共に歩く仲間がいれば もう一度、前を向けるはず そうすれば、見えてくる 忘れてしまった、大切な願い 丁寧で柔らかな描写に、あっという間にこの世界へ惹きこまれてしまいます 読んだ後は、きっと世界が、今までよりも少し素敵に見えるはず ぜひご一読を
毎日は毎日続くけれど、今日という日は二度と帰ってはこない。 当たり前のように思って見落としてきた大切なもの。 奥に隠れて気付かなかった大切な想い。 いつも隣にいたはずの、大切なひと。 なんとなく過ぎ行く日々の中にも、それらは確かにそばにあるのに。 いつだってそれに気付くのは、失ってからのこと。 だけどそれじゃ悲しいから、あと少しだけ 今を、君を、 大切にして、生きてみたいと思う。 そう、笑って。笑って。泣いても、笑って。 それだけで、空は晴れるから。 物語に込められた、優しくも強いメッセージ。 是非皆さんに感じて頂けたらと思います。 最後に、彼らの「今」が、幸せな「明日」に繋がっていることを、祈ります。
愛がどうやって生まれるのか。 わたしにはよくわからないけれど。 でも、確かなことは。 あのときのふたりの間に、 深く純粋な、愛が生まれていたということ。 この小説は、小説でありながら、たったひとりの人に向けた「ラブレター」でもあります。 それは、その人だけに伝えたい、心からの素直な気持ちを綴ったものなのです。 だからこそ、わたしたちの心にも直接響き、切なくも温かい想いを与えてくれるのでしょう。 世の中に「純愛物語」は、溢れ返るほど存在するけれど。 この小説のように、ここまで綺麗で、心を揺さぶられるものは、そうそうあるものではないと思います。 ふたりの愛の軌跡、そして奇跡を、是非あなた自身で確かめてみてください。