天使のアリア––翼の記憶––

「相変わらず大きなホールですね…」

ホールの大きさに圧倒される。アクセスしやすく、客席も多い。おまけによく響くという、何とも最高の立地条件、最高設備のホール。ここのホールの素晴らしさは県内1だ。

ここに来るのは始めてではないけれど、やっぱり大きい...


「ここのホールから依頼があったから。」

淡々と述べる先輩。若干呆れているらしい。

しかしそうでした。私が忘れていました。

ここの館長さんが藍羅先輩の大ファンで、是非ここで歌ってくださいませ、とオファーしてきたと先輩から聞いた。

そんな話も他人事のように話すんだから、先輩らしい。


「早く行くぞ。時間がないってさっきから言ってるだろ。10分後、ここのスタッフ達と今日のコンサートの打ち合わせがあるんだ。」

「はーい…」

こんなに大きなホールで歌うというのに、緊張している素振りも、楽しみでワクワクしている様子も見せないクールな先輩を追いかけた。


「一緒の楽屋だから。」

そう言って先輩は楽屋の扉を開けた。

「…相変わらず豪華…」


差し出しのお菓子や、花束が、所狭しと置いてある。全てに先輩宛の手紙やカードが書いてある。

所謂、先輩へのプレゼント。愛が詰まった贈り物。


そんな光景を見た先輩は、溜息をついた。眉間にしわが寄っている。


「せ、先輩…?」

どうしましたか、と声をかけると、


「持って帰るのが面倒くさいと思っただけだ。」


吐き出すように言った。


もう一度そのプレゼントの山を見ると、その数は軽く100は超えているだろう。


「多分、館長さんが宅配便を用意してくれますよ。」

「そうだといいな。」


私は苦笑し、先輩は溜息をついた。