「……ら…........はら...…」

すっと目が覚めた。

しかし、まだ起きて活動するのは躊躇されるので、ぼけーっと過ごすことにする。


あぁ、さっきのは、夢だったのだろうか。それならば、なんて、なんて苦しい夢なのだろう。


あの男の子なんて、とても苦しそうだった。

殺したくはないのだろう、あの女の子のことを。俺の愛しい人、なんて言うくらいだもの。

何が彼に彼女を殺そうとさせるのだろうか。


そしてまた、聞けた、あの美しい歌が。

先輩が歌っている時、それと同等、否それ以上に、美しかった。澄み渡っていた。

あれ、そう言えば、あの女の子の髪や姿…先輩に似ていなかった?歌声なんて、そっくりだったような気がする。

あの男の子だって誰かに似ていたような…


「華原!」

「はい!」


ガバっと顔を上げれば、怒った先生の顔。

さー、と血の気が引いて行く。

現実を、知る。

そうだ、今は授業中、でした…


しまった、あたしは何で寝ているのだろう。それも、授業中に寝れば鬼の如く怖いと有名なこの先生の授業中に。

ちらりと周りを見れば、哀れそうにこちらを見つめている人、先生に恐怖して震えあがっている人など様々だ。後ろは見れないけれど、ウサギの笑いを堪えている声が聞こえるので、大爆笑されているらしい。ウサギ、むかつく。


「俺の授業で寝るったー…いい根性だな…?」

「すすすすすいません!」


先生の顔は威圧感がある。怖い。そして、怒りを前面に出していないところが怖い。その笑顔の奥にある、怒り。それが怖いのだ。


「しかし、今日の俺は機嫌がいい」

「は、い…?」

「今日は許してやろう。もう座ってもいいぞ」

ニコニコ顔の先生。

語尾には音符まで飛んでいそうなくらいだった。