天使のアリア––翼の記憶––

私は考えながらも、T字路や十字路をあちこち曲がり、男達から逃げ切ろうと模索した。

落ち着け、私。この辺の土地勘ならある。少なくとも、この男共よりは知っている自信はある。

「おい待て小娘!」

そんな声が後ろから聞こえてくる。

振り返ってはいないのだが、全く疲れている気配は感じない。さすが、体力が違うだけはある。

このままじゃ、まずい。私は必死にポケットを探った。そして気づいた。私は失敗をしたのだ、と。


ケータイが、ない。



思い出せば、今朝遅刻しかけたために家に置いてきたのだ。おまけにばっちり充電中である。


どうしよう。これじゃ誰も助けを呼べない。


考えながら走ったために、私はまた失敗した。


この先は、行き止まりだ。


ウサギが言うように、私は阿呆なのかもしれない。というか、その事実を否めない。

ほら、もう見えてきた。行き止まりだ。


ここは、どうやらこの辺の家のごみ回収をする場所となっていて、滅多に人が来るところでもないらしい。ここの隣は工場とどこかの会社の事務所らしい。灯りは全くない。ただ色味のない街灯の灯りだけが、私を空しく照らしている。


仕方ない。男共との距離が近くなってしまうが、ここを引き返そう。そのまま交番に行って助けてもらう他はない。ここからでは家も、乙葉の家も、ウサギの家も遠すぎる。あれ、交番ってこの近くにあったかな?あぁ、確かここから100メートル西へ行ったところにあったような気がする。


覚悟を決めて後ろを振り向けば、





「小娘ごと気が手間取らせる」





あの男共がいた。