天使のアリア––翼の記憶––

「さっきの曲、どう思った?」

「良かったと思いますよ。」


本当に綺麗だった。

練習だとは思えないほど、素晴らしい出来栄えだった。

一つ一つの音に、言の葉に、心が籠っているのが伝わってくる。


「本当に、か?」

先輩は眉をひそめた。やはり、言わなければならないか。


「あの、本当に良かったとは思います。ですが…あの、一つだけ、ダメ出しというか、なんというか、あの…」


先輩の目を見ているとやはり言えなくなり、目を泳がせていると、

「言いたいことがあるならはっきり言え。これは遊びじゃないんだ。」

そう言われてしまった。

確かにそうだ。先輩は歌うことで、収入を得ている。中途半端なことはできないと思っていらっしゃる。それが、先輩のストイックさに繋がるのだろう。

私は決意を固めた。


「…分かりました。先輩のことなので既に分かってらっしゃるかと思いますが、言わせてもらいます。

2点あるのですが、先ほどの曲の15小節目の4拍目のEの音が微妙に低いです。同じメロディは全てそこの箇所が若干低くなっています。

それから、28小節目と29小節目がタイで繋がっていると思うのですが、そのDの音が少し短いです。そのほかの同じメロディの箇所は大丈夫だと思います。

他は特になかったかと思います。」


言い終わった後で、後輩であるにも関わらず上から言ってしまったことに対してやはり申し訳なく思って、

「すいません…」

と謝った。


もしかして先輩を怒らせたのかな、と思うと怖くて怖くて、顔を上げることなどできなかった。