天使のアリア––翼の記憶––

「お、乙葉…?」

遠慮がちに尋ねてみる。

「んー?何、どうしたのー?」


しかし、すぐいつものフワフワ乙葉に戻ってしまった。さっきまでの哀しそうだった表情の欠片は微塵もない。

あれ、何だろう、私の勘違い…?


「大丈夫…?」

それでも、と思って聞いてみるけれど


「えー?大丈夫だけど、どうしたのー?」


すごく不思議そうな顔をされた。

どうやら本当に私の勘違いだったらしい。


「…ううん、何でもない。…でも、何かあったら言ってね…?」

乙葉は私の大事な親友なんだから、と言うと


「月子ってば、どうしたのー?まぁ、何かあったら話すけどー。月子もだよー?」

「ありがとう。そうするね。」

「いい子いい子ー。」


そうやってニコニコ顔で頭を撫でられた。よしよし、とまるで自分のペットの犬が初めてお座りができたような感じだ。私は犬じゃない、人間だ。

何だか…とても馬鹿にされたような感覚がしたのだけれども、乙葉が笑ってくれたのでいいことにする。


乙葉には笑顔が似合う。

辛い顔なんて、してほしくない。

その為に私ができることがあるなら、何だってする。私は乙葉の親友だもの。

まぁ、万年帰宅部、THE・平凡の私にできることなんて、少ないのだけれども。