デューク先輩は悲しく微笑むと視線を下に逸らした。
「探していた歌姫の可能性が最も高かった人物が藍羅だった。だから俺は少しでも君に近づくために好きだと言い続けた。
でもいつの間にか、俺の目に君しか映らなくなった。君だけを見ている自分がいたんだ。
歌声だってもちろん凄く美しいけれど、それだけじゃない。
ムキになるひとつひとつの反応も、真っ赤になる顔も、仕草も、藍羅の全部が可愛くて、愛しくて、気が付けば夢中になっていた。本当に好きになってしまったんだ。
使命も任務も、何もかもを忘れて、何もかもがなくなって、ただ普通の学生になれたらいいのにと何度も願った自分がいた。今でも思う。普通の高校生になって、藍羅と普通のカップルになって、普通の幸せの中で毎日を過ごしたいと、そう思うよ」
逸らされていたデューク先輩の目が藍羅先輩を捉える。
「でも、絶対に忘れることはできない。忘れることは許されない」
先輩はさらに言った。
それをいうことで自分自身を縛り付けるような、そんな言い方だった。
「俺には、どんなことがあっても叶えたい願いがある。叶えなくちゃいけない願いがある。
願いが叶うなら、俺はどんなことだってする。どんな犠牲を払っても構わない。例え俺が死のうが、地獄に落ちようが、もっと言えば、誰かを殺すことになったって、どうでもいい。願いが叶うなら、それでいい。
願いを叶える、そのために俺は全てを捧げ、そのために俺は生きてきた。願いこそ、俺の全てだ。だからね、藍羅」
そこで一呼吸を置いて、先輩は言った。
「さよならをしないといけないんだ」
2度目の別れの言葉。
残酷で哀しくて、何が彼をそうさせるのだろう。
彼自身望んだことではないのに。
「藍羅、好きだよ」
もう一度そう言って、デューク先輩は握った弓矢の矛先を藍羅先輩に向けた。
弓からは黒いオーラのようなものがゆらゆらと立ち上っている。
いつか見た夢と重なる。
嫌な予感が全身を貫く。
「先輩、やめて!」
私の叫び声は空間に響いたまま漂って彼には届かない。
「俺は、俺の願いを叶えるために、君を…殺す」
デューク先輩は弓矢を握る手に力を加えた。
「…どうして…」
戸惑いを隠せないでいる藍羅先輩のか細い声とは対象的に、デューク先輩は黒い弓矢を力強く構えている。
「…どうしても、だよ」
苦しそうな表情をしているのは、二人ともだった。
「さよなら、俺の大好きなひと」
そしてデューク先輩は何かを決めたのか、弓を握る手に力を入れ、弓矢を引っ張る。
弓矢を持っていたデューク先輩の指が離れる、その直前、客席から何かが飛び込んできた。
「探していた歌姫の可能性が最も高かった人物が藍羅だった。だから俺は少しでも君に近づくために好きだと言い続けた。
でもいつの間にか、俺の目に君しか映らなくなった。君だけを見ている自分がいたんだ。
歌声だってもちろん凄く美しいけれど、それだけじゃない。
ムキになるひとつひとつの反応も、真っ赤になる顔も、仕草も、藍羅の全部が可愛くて、愛しくて、気が付けば夢中になっていた。本当に好きになってしまったんだ。
使命も任務も、何もかもを忘れて、何もかもがなくなって、ただ普通の学生になれたらいいのにと何度も願った自分がいた。今でも思う。普通の高校生になって、藍羅と普通のカップルになって、普通の幸せの中で毎日を過ごしたいと、そう思うよ」
逸らされていたデューク先輩の目が藍羅先輩を捉える。
「でも、絶対に忘れることはできない。忘れることは許されない」
先輩はさらに言った。
それをいうことで自分自身を縛り付けるような、そんな言い方だった。
「俺には、どんなことがあっても叶えたい願いがある。叶えなくちゃいけない願いがある。
願いが叶うなら、俺はどんなことだってする。どんな犠牲を払っても構わない。例え俺が死のうが、地獄に落ちようが、もっと言えば、誰かを殺すことになったって、どうでもいい。願いが叶うなら、それでいい。
願いを叶える、そのために俺は全てを捧げ、そのために俺は生きてきた。願いこそ、俺の全てだ。だからね、藍羅」
そこで一呼吸を置いて、先輩は言った。
「さよならをしないといけないんだ」
2度目の別れの言葉。
残酷で哀しくて、何が彼をそうさせるのだろう。
彼自身望んだことではないのに。
「藍羅、好きだよ」
もう一度そう言って、デューク先輩は握った弓矢の矛先を藍羅先輩に向けた。
弓からは黒いオーラのようなものがゆらゆらと立ち上っている。
いつか見た夢と重なる。
嫌な予感が全身を貫く。
「先輩、やめて!」
私の叫び声は空間に響いたまま漂って彼には届かない。
「俺は、俺の願いを叶えるために、君を…殺す」
デューク先輩は弓矢を握る手に力を加えた。
「…どうして…」
戸惑いを隠せないでいる藍羅先輩のか細い声とは対象的に、デューク先輩は黒い弓矢を力強く構えている。
「…どうしても、だよ」
苦しそうな表情をしているのは、二人ともだった。
「さよなら、俺の大好きなひと」
そしてデューク先輩は何かを決めたのか、弓を握る手に力を入れ、弓矢を引っ張る。
弓矢を持っていたデューク先輩の指が離れる、その直前、客席から何かが飛び込んできた。


