天使のアリア––翼の記憶––


「攻撃、耐えるだけじゃ、だめ」


乙葉が真剣な顔で頷いた。


「確かにー。このままじゃ、何の進展もありませんねー」

「えぇ。こうして攻撃を防御しているだけでは、彼を止めることはできないわね」


彼、それはデューク先輩のことだろう。

デューク先輩の姿を捉えようと、卵色のドームの中から探すけれど、黒いスーツを着た敵に阻まれてその姿は見えない。


先輩は言った。

叶えたい願いがあるのだと。

絶対叶えなければならない願いがあるのだと。

それは、どんな願いなのだろう。

何が彼を突き動かすの。


「容赦ねぇなあ」

はぁ、とウサギは溜息を吐く。


「私達も黙っていられないわね」


七星先輩はニッと笑った。

所謂、不敵の笑みってやつ。

…先輩、何か企んでる。


「先輩…?」


問いかけても、先輩はこちらを見ない。


「さぁ、行きましょう」

北斗先輩、ウサギ、乙葉が頷いた。


「月子ちゃんと藍羅はここから出ないで。この中にいれば敵の攻撃は当たらない。絶対に大丈夫だから」


そうやって微笑まれたって、全然納得なんてしない。


「先輩、何をする気ですか?」


先輩はいつもと同じように優しく微笑むだけだった。


「反撃、開始よ」


そう言って4人はシールドを突き破った。

何も恐れるものがないとでもいうように、自信に満ち溢れている。


「先輩!ウサギ!乙葉!」


私の叫び声はシールドの中で響いた。

気づいたのか、ウサギがこちらを一瞬振り返った。


"大丈夫"


口だけを動かして、彼はそう言った。


何が、大丈夫、よ。

そんな状況で、何が大丈夫なの。

敵はあんなにも強いのに。


それっきり、彼はこちらを振り返ることはなかった。