天使のアリア––翼の記憶––

「本当に分かってる? 絶対絶対、怪我なんてしないでね!」

私が念を押すと、分かってるよと乙葉は笑った。

乙葉の手が私の頬に触れる。

伝わる手の温度は少し冷たかった。

「そんなに心配しないでー?」

なんて、眉を下げて慰めるように言われたって心配がなくなるはずがない。


「皆さんもです」


七星先輩、北斗先輩、ウサギを見てそう言った。

「絶対怪我なんてしないでください。本当に、しないで」

まして、死んだりなんて、そんなの絶対に嫌。

するとウサギが言った。


「お前、やっぱ馬鹿だな」

「なっ!?」


いつもなら呆れ顔でからかってくるのだが、彼は微笑んでいた。


「怪我するわけねぇだろ。先輩達だって相当強ぇんだ。お前が心配しなくたって大丈夫だ。な?」


ウサギはまるで幼い子を諭すような口調で言う。

私の言いたいことが、伝えたいことが、届いてないのだと知る。


「分かってるよ!みんなが強いってことは、分かってるよ!」


私は大声で言った。


「だけど、みんな大事な人達だから、だからこそ心配なんだよ!」


もう誰かを失うような思いはしたくない。

離れて行ってしまうかもしれないと思っただけで、あんなにも苦しい思いをした。

みんなのことが好きで、大切な存在で、だからこそ思う。


誰一人だって失いたくない。

怪我だってしてほしくない。


いつまでも笑顔でいてほしい。


甘ったるい綺麗事だと言われるかもしれない。

けれど、何を言われたってそう思うんだ。


大切な、大切な仲間だから。


「俺だってそうだ。このシールドの中にいる皆は、俺の大事な仲間だ」


ウサギは静かに言った。


「大事な仲間だから、失いたくない。失わないために、戦うんだ」


瞳はまっすぐだった。

それだけ意志が強いのだと思わざるを得なかった。



「…このままじゃ、だめ」


北斗先輩が言った。