「返してよ!返してよ、お母さんを!」
叫ぶ私達に、デューク先輩は憂うように笑いかけた。
「…気持ちは分からなくもないけどね。返してって言われても、どれだけ泣き悲しんでも、亡くなった人は帰ってこない。…もう2度と」
一瞬だけデューク先輩が暗い表情をしたように見えたが、次の瞬間、またいつもと同じあの笑顔に戻っていた。
学校にいるとき爽やかだと思っていた笑顔が、こんなにも憎いと思うようになるなんて私は想像もしていなかった。
私は以前見た自分の過去夢を思い返していた。
母は選べと言っていた。自分で、選べと。
それはきっと、このことだったんじゃないかなと思う。
歌姫を還すのか、どうするのか。
…お母さん、私はもう決断できたよ。
私はこの決断を、自分自身を、仲間を、信じる。
「私は渡さない。貴方の、竹取会の願いなんて叶えさせない。必ず阻止してみせる!」
これが私の決断。私の答えだよ、お母さん。
私はデューク先輩を睨みつけた。
「そうね、月子ちゃん。竹取会に願いは叶えさせない。そして還しましょう、歌姫を」
七星先輩の言葉に頷いて、ごしごしと腕で涙を拭いた。
そして仲間の方を見渡した。
北斗先輩は黙って、ウサギは挑戦的な不敵な笑みを浮かべて、乙葉は慈悲深い微笑みを浮かべて、皆頷いてくれた。
「藍羅先輩…」
振り返ると、藍羅先輩は微笑んでいた。
「大丈夫。みんなならきっと、大丈夫」
私達は竹取会やら歌姫のことやらを話していたのだけど、藍羅先輩は私達が何を話しているのかさっぱり分からなかったんじゃないかな?
そんな疑問が浮かんだ。
けれど、私達の話が分からなくても、大丈夫だと信じて背中を押してくれた。
それがすごく嬉しかった。
そしてもう1度デューク先輩を睨みつけるように見た。


