天使のアリア––翼の記憶––

「月読とは会ったことがあるんだ。…そう、夢でね」


そして彼は微笑んだ。


「彼女は本当にすごい人だよ。その力もすごいけれど、とても優しい。そして自分の子供を何よりも愛おしく思っていた。出会うたびに嬉しそうに月子ちゃんのことを話していたよ」


昔の思い出を懐かしむようにデューク先輩は言う。



「どうして先輩が、お母さんと夢で会ったりするんですか」



竹取会の危ない人と、どうしてお母さんが会うのか。

夢巫女の、それも月読の名を持つ者と、夢で会うだなんて、そんなこと、しようと思ってできるような簡単なことじゃない。

夢巫女は夢の中で強い力を発揮して、未来を観る。

月読の名を持つ者は、特に強く、最強だ。

彼女に敵うものなんてそうはいないだろう。


もし先輩自ら会おうと思って会えたのなら、その力は月読様と同程度、若しくは、それ以上。

けれどそんなにも強い人なんて、滅多にいない。



「あぁ、別に月読は俺に会おうとしたわけじゃない。俺が会いに行ったんだ」

「え…?」


「俺が夢巫女、月読の予言を盗み見ようと思ってね」


目を丸くして言葉を失う私にをよそに、デューク先輩は言葉を続ける。


「彼女には本当に驚いたよ。俺は他人の夢を覗くことは割と得意で、夢を盗み見ていることがばれることも、まして俺の存在を認識されることも、それまで1度もなかったんだ。それなのに、月読の夢に入り込んだ瞬間ばれてしまった。俺、初めてしくじったよ」

あははと自分の失敗談を笑って話している。


「…それで、なんすか…?」


ウサギが暗い声で言った。


「…月子の母親が呪いにかけられたのは、先輩がしくじったからなんですか?」


ウサギはぎりりと拳を強く握りしめた。

その目は鋭くデューク先輩を睨みつけている。


「彼女は俺の存在を知ってしまったからね。竹取会のことを知られるわけにはいかなかった。どんなに力があろうと、どんなことがあろうと。だから…仕方ないことだよね」


先輩は何気ないことのようにさらりと言った。

それが、私には我慢できなかった。


「母の死を仕方ないなんて言うな!」


私は叫んだ。

悲しみと憎しみが交差して膨れ上がって、言葉は詰まってでないけれど代わりに涙が溢れた。

「デューク先輩は…どれだけ月子達家族が苦しんだのか分かりますか?!どれだけ悲しんだのか分かりますか?!それを…それを、仕方がないなんて言葉で表さないで!」

乙葉も叫んだ。