天使のアリア––翼の記憶––

「え…?」

デューク先輩の言葉の意味を理解できないのは、藍羅先輩だけじゃなかった。

私にも分からない。

だって、藍羅先輩も、デューク先輩も、両方傷ついている。

それなのに、どうしてそんな苦しいような顔をしてまで、さよならをしよう、だなんていうの?

ねぇ、先輩は、さよならなんて、そんなことを望んではいないのでしょう?

それなのに、どうして。


「…どういう意味だよ…それ」

戸惑いを隠せない藍羅先輩の問いに、そのままの意味だよとデューク先輩は微笑んだ。

辛そうな笑顔だった。





「さあ、その時がきた。



もう、終わりにしよう」






そう言ってデューク先輩は両手を広げた。

それを合図に、かぐや会館大ホールの重厚感のあるゴージャスな扉が、大きな音を立てて荒々しく開かれた。

それと同時に黒いスーツ、サングラスの男達がホール内に入ってくる。


七星先輩、北斗先輩、ウサギと乙葉が急いで私たちのいるステージの方へ走ってきて、私と藍羅先輩を庇うように前に立った。

双子の先輩は杖を持って、ウサギと乙葉は剣を構えて臨戦状態である。


私と藍羅先輩は突然の出来事に呆然としていた。


ホールに侵入してきた奴らは、つぎつぎとデューク先輩の後ろに並ぶ。

奴らの黒いスーツの襟では、奴らの紋章と思われるピンバッジがホールのライトに煌めいた。

それは見覚えのあるもので。


「…どうしてすか、デューク先輩」


私は信じられなかった。

否、信じたくなかった。


「どうして、デューク先輩が竹取会と一緒にいるんですか。どうして…」

すると、デューク先輩は笑った。あはは、と乾いた笑い声だった。

「どうしてって…理由は単純明快だよ。月子ちゃんだって分かっているはず。それとも、信じられない?」


そして私を嘲笑するような瞳で、最悪な言葉を口にした。