やがて、プログラムのいちばん最後の曲の番となった。
最後の曲は、先輩たっての希望で、名前のない曲が選ばれた。
私はピアノ椅子に座ったまま、藍羅先輩を見守っていた。
藍羅先輩は目を閉じて意識を集中させているようだった。
そして歌声が響きだした。
何度となく聞いた曲だけれど、思わず聞き惚れて涙が溢れそうになった。
それは、まるで
クラシックのようで、
ジャズのようで、
喜びで満ちているようで、
どこか楽しそうで、
哀愁と憂いを帯びていて、
どこか辛そうで、
懐かしくて、
近代的で、
どこか底なしに明るいようで、
深い闇のような影があるようで、
聞いたことがありそうで、
聞いたことがないようで、
とても不思議なのに、
とても綺麗だった。
歌声はホールの中を駆け巡る。
しなやかに、伸びやかに。
不思議なのに美しいあのメロディが、全てを包み込むように優しく、空間に響き渡る。
そして歌声が次第に小さくなり、その残響が全て消えてしまうと、先輩は目を開けて客席に座るあの人を見た。
「デューク」
藍羅先輩は、彼に笑いかけた。
私は一瞬事態を呑み込めなかった。
だって、あの藍羅先輩が。
いつも照れて、微笑むことはおろか顔をまともに見ることさえできないあの藍羅先輩が。
いつもデューク先輩絡みの話になると顔を真っ赤にしてツンデレだった、あの藍羅先輩が。
デューク先輩に、笑いかけている。
最後の曲は、先輩たっての希望で、名前のない曲が選ばれた。
私はピアノ椅子に座ったまま、藍羅先輩を見守っていた。
藍羅先輩は目を閉じて意識を集中させているようだった。
そして歌声が響きだした。
何度となく聞いた曲だけれど、思わず聞き惚れて涙が溢れそうになった。
それは、まるで
クラシックのようで、
ジャズのようで、
喜びで満ちているようで、
どこか楽しそうで、
哀愁と憂いを帯びていて、
どこか辛そうで、
懐かしくて、
近代的で、
どこか底なしに明るいようで、
深い闇のような影があるようで、
聞いたことがありそうで、
聞いたことがないようで、
とても不思議なのに、
とても綺麗だった。
歌声はホールの中を駆け巡る。
しなやかに、伸びやかに。
不思議なのに美しいあのメロディが、全てを包み込むように優しく、空間に響き渡る。
そして歌声が次第に小さくなり、その残響が全て消えてしまうと、先輩は目を開けて客席に座るあの人を見た。
「デューク」
藍羅先輩は、彼に笑いかけた。
私は一瞬事態を呑み込めなかった。
だって、あの藍羅先輩が。
いつも照れて、微笑むことはおろか顔をまともに見ることさえできないあの藍羅先輩が。
いつもデューク先輩絡みの話になると顔を真っ赤にしてツンデレだった、あの藍羅先輩が。
デューク先輩に、笑いかけている。


