天使のアリア––翼の記憶––

目的地もないまま、私はただただ走り続けた。

苦しみから逃げるように。

悲しみから逃げるように。


そんなことしたって逃げきれないけれど、そうせざるを得なかった。


走り続ける私の頭の中で、乙葉との会話が蘇る。


『……月子が羨ましいなーって思ったんだー…』


あぁ、どうして、私は


『…月子が、私よりずっと魅力的だからー…』


気づいてあげられなかったのだろう


『本当に魅力的だと思うよー!だって、月子は可愛いものー』


ふんわり優しい癒し系の笑顔に隠された


『ずっと前から知ってた。ウサギは月子のことが好きだって』


幼馴染の苦しみを


『どうしてウサギを傷つけるようなことをするの?!』


彼女の怒りの原因を



…どうして今になって



『…ウサギのことが…好き…』



気づいてしまったのだろう



『なんで月子は、そう、馬鹿なの…っ?』



…あぁ、本当に私は馬鹿だよね。


私も今になって、ようやく気づいたよ。




もう今更



遅いのに。




移りゆく学校の風景が、少しだけ滲んで見えた。



どうして私は乙葉の言葉を聞くまで気づかなかったの。






私、ウサギが好きだ。





…もっと早く気付けば良かったのに。



今になって、


今になって、気づいたなんて。



そんなの、遅すぎる。




後悔、苦しみ、悲しみ、切なさ。



色んな感情が心の中で渦を巻く。


私は立ち止まって、荒れた息を整えた。


同時に溢れてきた無数の涙。


その温度を感じながら、私がしゃがみ込んで顔を覆った。



気づいたときには、遅すぎた。





だって もう この想いは
























         届 か な い