*
私は保健室へと続く廊下を全力失疾走していた。
私の試合は先ほど終了した。
無事に勝利したが、これまでの試合結果の関係で決勝戦には出場できないことになってしまった。
けれど、今となってはそんなことはどうでも良い。
乙葉の怪我。それだけが私にとって大事なことだった。
試合終了後に辺りを見渡してみたものの、観客席に乙葉の姿を見つけることはできなかった。
ということはまだ保健室にいるはず。
体育館から保健室までは思いの外近く、すぐに保健室に辿り着いた。
保健室の扉に手をかけたその時、中から声が聞こえてきた。
『…ウサギのことが…好き…』
『…乙葉…』
思わず扉にかけていた手を引っ込めた。
中から聞こえてくる声は、紛れもなく私の大事な幼馴染の声だった。
『…でも、俺…』
『分かってる。それに、ずっと前から知ってた。ウサギは月子のことが好きだって。
いつもウサギは月子のことを見ていた。月子を守ろうとしていた。
すごくすごく大事な存在だなって…分かってた』
紡がれる乙葉の言葉が、苦しいほど切ない。
泣きたくなるほどの想いが言葉一言一言にぎゅっと詰まってるような、そんな話し方だった。
『…乙葉…』
『でもね、私も好きなの、月子のこと。大事な幼馴染、ううん、家族みたいな存在だから。
だから月子の良いところも沢山知ってる。誰に対しても優しくて、明るくて、一生懸命で、ピアノが上手で、笑顔が素敵で…。私にはないものも、月子には沢山ある。
月子は本当に魅力的な女の子だと思うよ』
いつかの帰り道での出来事を思い出した。
突然乙葉が私に言った。
月子は可愛い、と。
あの時は意味が分からなかったが、今ようやく気付いた。
最近見せていた辛そうな、寂しそうな顔の意味も、ようやく分かった。
あぁ、私は本当に馬鹿だ。
どうして気付いてあげられなかったんだろう。
大事な幼馴染が恋をしていることを。
私のせいで乙葉が苦しんでいたことを。
どうして、私は。
『…返事は、いつでもいいよ。寧ろ、しなくてもいい。…聞いてくれてありがとう』
『…乙葉…』
私は逃げるようにその場から走り去った。
私は保健室へと続く廊下を全力失疾走していた。
私の試合は先ほど終了した。
無事に勝利したが、これまでの試合結果の関係で決勝戦には出場できないことになってしまった。
けれど、今となってはそんなことはどうでも良い。
乙葉の怪我。それだけが私にとって大事なことだった。
試合終了後に辺りを見渡してみたものの、観客席に乙葉の姿を見つけることはできなかった。
ということはまだ保健室にいるはず。
体育館から保健室までは思いの外近く、すぐに保健室に辿り着いた。
保健室の扉に手をかけたその時、中から声が聞こえてきた。
『…ウサギのことが…好き…』
『…乙葉…』
思わず扉にかけていた手を引っ込めた。
中から聞こえてくる声は、紛れもなく私の大事な幼馴染の声だった。
『…でも、俺…』
『分かってる。それに、ずっと前から知ってた。ウサギは月子のことが好きだって。
いつもウサギは月子のことを見ていた。月子を守ろうとしていた。
すごくすごく大事な存在だなって…分かってた』
紡がれる乙葉の言葉が、苦しいほど切ない。
泣きたくなるほどの想いが言葉一言一言にぎゅっと詰まってるような、そんな話し方だった。
『…乙葉…』
『でもね、私も好きなの、月子のこと。大事な幼馴染、ううん、家族みたいな存在だから。
だから月子の良いところも沢山知ってる。誰に対しても優しくて、明るくて、一生懸命で、ピアノが上手で、笑顔が素敵で…。私にはないものも、月子には沢山ある。
月子は本当に魅力的な女の子だと思うよ』
いつかの帰り道での出来事を思い出した。
突然乙葉が私に言った。
月子は可愛い、と。
あの時は意味が分からなかったが、今ようやく気付いた。
最近見せていた辛そうな、寂しそうな顔の意味も、ようやく分かった。
あぁ、私は本当に馬鹿だ。
どうして気付いてあげられなかったんだろう。
大事な幼馴染が恋をしていることを。
私のせいで乙葉が苦しんでいたことを。
どうして、私は。
『…返事は、いつでもいいよ。寧ろ、しなくてもいい。…聞いてくれてありがとう』
『…乙葉…』
私は逃げるようにその場から走り去った。


