天使のアリア––翼の記憶––

「お、降ろしてよ、ウサギー!」

乙葉は赤面して恥ずかしそうに言った。

皆に注目されているこの状態の恥ずかしさと言ったらないだろう。

「降ろしたところでまともに立てねぇだろ」

無茶をするなとウサギは言った。

そして乙葉のチームメイトの方を見た。

「今から乙葉を保健室に連れて行くが、この怪我だ、もう試合には出られねぇ。だから乙葉の代わりの選手を試合に」

「あ、うん!」

チームメイトが何とか返事すると、今度は乙葉が申し訳なさそうな顔をして言った。

「ごめんねー。後は宜しくー」

「任せといて、絶対勝つから!」

「祈ってるよー!」

そうしてウサギは歩きだした。

私は丁度入り口に近い場所にいたので必然的に2人は私の横を通った。

「乙葉!」

思わず駆け寄ると、乙葉は眉を下げて微笑んだ。

「月子、ごめんねー。折角応援してくれてたのに、もう試合に参加できないやー」

「そんなことどうでもいいよ!」

乙葉は眉を下げて笑っていた。

「私も保健室について…」

付いて行くから、そう言いかけたのに遮られた。

「月子、今から私らの試合だよ!」

「え!?」

思わず耳を疑った。

試合時刻が遅れているとは聞いていたけど、まさか今からだったとは。

「で、でも私、乙葉が心配で…」

「月子!」

乙葉が叫ぶように私の名前を呼んだ。

ハッとして乙葉を見ると、乙葉はふわりと優しく微笑んだ。

「試合出なよー」

「でも!」

「月子が今しないといけないことは何なのか、分かってるー? 月子がしないといけないことは試合に出て勝つことー。そうじゃないのー?」

乙葉は私の手を握って言った。

「私は大丈夫だからー。ねー?」

乙葉にこんな笑顔をされたら断れない。

「俺もついてんだから、心配するな」

ウサギが珍しく微笑んだ。

「…試合終わったら行くからね!」

「絶対勝ってねー!」

「もちろん!」

勝利を誓い、ウサギに乙葉を頼んで、私は試合へ、乙葉は保健室へと向かった。

絶対、勝つ。

そう心に決めて。