天使のアリア––翼の記憶––

あちらが点を入れればこちらが点を入れ返す、こちらが点を入れれば相手が点を入れ返す__両者譲らない攻防戦が繰り広げられていた。

しかも今は同点だ。

1点を入れられるとそれに追いつくにはかなりの重労働が必要だった。

今現在、ボールは3組女子が持っていた。

3組女子がドリブルでコートを駆け上がる。それは私には到底追いつくことできないような速さだった。

2組女子も応戦しようと必死に食らいついていた。

しかしボールを持った彼女からボールを奪い返すことができず、ゴールはすぐそこに迫っていた。

「もらったぁっ!」

ゴールまであと2メートルのところで、彼女は目の色を変えた。

あぁ、点を入れられる。

私がそう思うのと同時に、ドリブルをしていた女子がゴールめがけてシュートした。

その瞬間だった。

颯爽と、まるで風のように、彼女に向かって、どこからともなく走ってきた人物がいた。

乙葉だった。

乙葉は空に解き放されたボールを跳び上がってキャッチした。

同時に大きな歓声があがる。

「悪いけどそう簡単に点はあげないよー!」

乙葉はそう言ってニヤッと笑った。

呆気に取られたような顔をしたのは、先ほどシュートしようとした3組の女子だった。

乙葉はそのまま振り返り、今度は自分たちのゴールに向かって走り抜けた。

ドリブルをする彼女の周りには2人の敵がいてボールを何とか奪い取ろうと必死になっているのだが、彼女たちは乙葉から全くボールを奪い取れなかった。

ボールを奪おうとするたびに、するりと乙葉が避けてしまうからだった。

スリーポイントラインが見えてきたところで、乙葉は再び跳び上がってボールをゴールに向けて放った。

それは綺麗な弧を描いてゴールへと一直線に向かっていった。

バサッというボールがゴールに入った音が聞こえて、同時に得点を告げるブザー音が鳴り響き、観戦していた生徒たちは盛り上がりを増した。

「乙葉ナイスー!」

歓声にかき消されぬよう、手をメガホンのようにして私ができるだけ大きな声でそう叫ぶと、乙葉は気づいたのか私に向かってブイサインをした。

試合中ということもあって、乙葉は汗だくだったけれど、爽やかで可愛くて、本当に素敵な笑顔だった。

そして彼女は再び走り出した。

ふと3組女子の方を見ると、彼女は目の色を変えて、敵意剥き出しの状態だ。

私は両手を握りしめて、乙葉の勝利と無事を祈った。