天使のアリア––翼の記憶––

1年女子バスケの会場に着くと、そこでは既にこれから試合をする生徒がコートに入っていた。

試合前にコートでの練習時間が与えられているからだ。それぞれのチームに1つずつボールも与えられている。

試合前ということもあり観客席は人が多く混雑していたが、何とかコートが見える場所を見つけ出した。

乙葉はどこだろうと思って見渡すと、彼女はすぐに見つかった。

どうやら試合形式の練習をしているようだったが、運動部である他のメンバーに混じっていても全く違和感がない辺り、乙葉の運動神経、運動能力は本当にすごいと思う。

「乙葉!」

彼女のチームメイトが彼女にパスをした。

「任せてー!」

乙葉はそれを受け取ると、ドリブルしながらコートを駆け上がる。

そしてゴール前まで来ると、フワッと跳び上がり、あっさりとゴールを決めた。

流れるような、軽やかで自然な動きだった。

「乙葉、ナイスー!」

駆け寄るチームメイト達に、乙葉はニコッと少し得意気に笑った。


「今から試合を始めます!」

ウサギではないもう一人の審判役の生徒の声が響いて、コートにいた生徒たちはその中央に集まった。

互いのチームがお辞儀をし、同時に試合開始を告げる音が鳴り響いた。


試合が始まった。


球技大会でのバスケのルールは、本当のそれとは違う。

10分1セットを2回行い、2セットでの合計の点数で競うのだ。

相手は優勝候補と噂の3組バスケチーム。

彼女達は実力もさることながら、少々気が荒いことでも有名だった。

3組が先ほど戦った5組のバスケチームからは数人の怪我人が出たと聞いた。3組のファウルがきつかったそうだ。

そんな彼女達と今から戦うなんて、私ならきっと逃げ出してしまいそうだった。

彼女達に対する恐怖と同時に心配もあった。

乙葉が怪我などしなければいいのだけど。

彼女が怪我をした姿を想像しかけて、頭を左右に振ってそれを消した。

そんな姿、見たくもない。考えたくもない。

そんなことを考えただけで心がぐっと痛む。

軽やかに駆け回る彼女を見つめながら、彼女が無事笑顔で試合を終えられることを祈った。

『勝ったよー!』

試合終了後に、汗だくだけどにっこり笑ってブイサインを見せてくれることを願った。