天使のアリア––翼の記憶––

「月子ちゃんは、どこまで知っているのかしら?」

「何をですか?」

首を傾げると、北斗先輩が呆れたように、はぁ、と溜息をついた。

「…竹取会」

その声はあまりにも小さくて、きっと周りに人がいたとしても誰にも聞こえなかっただろうと思った。

北斗先輩の大胆な言葉に驚いた私は、急いで人差し指を唇の前に立てると小さな声で二人に警告した。

「そ、そんなこと、こんな場所で話しても大丈夫なんですか!? もし、誰かに聞かれたりしたら…!」

しかし美人すぎる双子先輩はそんなことを気にすることもなく、ケロっとした顔で私に言った。

「大丈夫」

「だって、シールド張ってあるもの」

え、と私は大きな声を出してしまった。
ハッと両手で口元を抑えたが、遅い。

七星先輩はちょっと驚いたような顔をしてすぐに微笑んでくれたが、北斗先輩は眉間に深いシワを寄せたまま怪訝そうな顔をしている。

すいません、と謝ると、慣れないファンタジーワードについて質問をした。

「し、シールドって何ですか?」

そうね、と七星先輩は言った。

「簡単に言えば結界のことね。外の世界から完全に隔離された空間のことよ。張った本人が認めた人しかその結界内には入れないの。まぁ、余程大きな力を持った人なら、入ることができるのだけれど」

そんな人は滅多にいないわ、と七星先輩は付け足した。納得というよりは呆然としてしまう。あまりにファンタジーなのだ。


「それで、俺達もここにいられるんですね」


聞きなれた声が聞こえた。


「えっ?」

驚きながら振り返ると、そこには見慣れた2つのシルエット。


「ウサギ、乙葉!?」


大好きな幼馴染がいた。


「そうよ、貴方達とも話しておかないとと思ってね」

驚く私をよそに七星先輩は微笑んだ。

「それにしても久しぶりね。あの藍羅のコンサート以来かしら?」

「そうなりますね」

ウサギ、乙葉ともこの双子の先輩とは知り合いのようだ。

あの藍羅のコンサート、ということは、ついこの前にあったあのコンサートだろうか。

「あの後はいろいろと忙しかったみたいね?」

どうやら竹取会とのやり取りのことを言っているらしいことが伝わってくる。

「えぇ、まぁ。別に大したことはありませんでしたが」

余裕そうに笑うウサギ。

その笑顔に、つい見惚れそうになった自分自身を叱った。そんなことは許されないでしょう、と。今更何を思っているんだ、と。

「貴方ならきっとそういうと思ったわ」

七星先輩は、ふふ、と上品に笑った。