「おばあちゃん…?」

すると、ハッとおばあちゃんはいつもの優しい表情に戻った。


「何だい?」

「何だい、じゃないでしょう?おばあちゃん、どうかしたの?」

私は尋ねるけれど、おばあちゃんは首を横に振った。


「どうもこうも、何もないさ。最近の若い子はこういう夢を見るんだなと思ってねえ。」

「ふーん…?」


私にはそういう風には、見えなかったんだけどな…?だって、お先真っ暗、という表情をしていたじゃない…

しかしおばあちゃんに何もないと言われては、私も何も言えなくなる。詮索なんてできやしない。


「さ、わたしゃもう寝るとするかねえ。」

「え、もう寝るの?」

まだ21時だよ?いつものおばあちゃんにしては2時間も早い就寝だ。


「私だってそら疲れるときもあるさ。そうだ、食器の片づけは自分でやるんだよ。」

「ほーい。」

「明日は休みだからって寝過ごすんじゃないよ。」

悪戯っ子のような笑いをするおばあちゃんに、私も笑いかけた。

「もう、分かってるよ。」


そしておばあちゃんは立ち上がると、

「おやすみ、月子。」

「おやすみなさい、おばあちゃん。」

リビングを後にした。


笑顔で見送ったものの、私は異変に気づいていた。

可笑しい。パジャマではなく着物着ているから、まだお風呂には入っていないだろうに、もう「おやすみ」だなんて。

きっとこれからお風呂に入るのだろうけど、今このタイミングで「おやすみ」って言う必要がないじゃない。私だってまだ起きているつもりだし、大体、いつもはお風呂に入ってからおやすみを言うのに。


変なおばあちゃん…


まぁ、そんな時もあるか。ただの気まぐれだろう。そんな気分だったに違いない。細かいことは気にしない、気にしない。


そうだ、夢で聞こえたあの歌…今日聞けるといいな。


そんなことを考えながら、私は食器を片付けた。