そこで、目が覚めた。

息が上がって、汗までかいている。


…なんて夢を見たんだ、私は。


ふー、と長い溜息をついた。


夢の中では気づかなかったが、よくよく考えればあの声はお母さんの声だ。

お母さんが、問いかけていたんだ。わざわざ私の夢に現れて、問いかけたんだ。後悔していないか、と。

私もどうしてあんなことを答えていたのか目覚めてしまった今はもう分からないけれど、胸がぎゅっと締め付けられるような感覚だけは残っている。


私や私の血族にとって、夢というものは他人のそれとは違う。

私達の夢に現れる人物は、私達が勝手に頭で考えたものではない。幻想でもない。

眠りによって肉体から一時的に離れて魂となった存在や、肉体が既に滅んでしまった人など、その人自身、ご本人様なのだ。

例え声だけだとしても、それは本人の声、つまり私が今日夢で聞いた声は私の母本人の声だということになる。

そうなると疑問も生まれる。

なぜお母さんは私の夢に現れたのか。

どうして、後悔してないかだなんて、どうしてそんなことを聞くのか。

私に何をさせたいのだろう。


それだけではない。

夢の中での私は一体何を諦めているの。

何を思ってあんな回答をしたの。


自分で自分のことが分からなかった。

ぐるぐると疑問は寝起きの頭を駆け巡るので、もうそれでいっぱいになってしまう。


ふと時計を見るといつもより時計の針が進んでいるようで、ようやく頭が覚醒すると同時にベッドから飛び起きた。

急いで制服に着替えてリビングへ走り込み、朝食を胃に詰め込むとスクールバッグを肩にかけると同時に家を飛び出した。


遅刻だけは、避けなければ。


やっと覚醒した脳にはその思考しかなかった。


今にも降り出しそうな程どんよりとした梅雨空の下、愛用の傘を持ってわき目もふらず全力疾走する私。

走りながらだが、これだけは伝えたい。

何度も言うけど、私は生粋の文化系文化部です!