天使のアリア––翼の記憶––

「さ、お腹すいたろ?」

そう言われた瞬間にお腹が音を立てた。

恥ずかしくてお腹を押さえて俯く。


「おやおや。さ、今からご飯を温めてやるから、早く着替えておいで。」

「ありがとう。」

私は自分の部屋へと直行し、すぐに着物を取り出した。


あ、我が家には洋服はないのです。あるのは、和服と礼服だけ。あと、制服かな。

私がタンスから取り出したのは、牡丹の花が描かれているとても綺麗な紅梅色の着物。派手でもなく地味でもない、普段着にはもってこいの着物だ。帯は綺麗で細かい花の模様の刺繍が施されている薄桜色のものを選択した。

私の大好きな組み合わせの一つです。


毎日――物心ついたころからずっと着ている着物を着るのは、もう慣れたもの。慣れた手つきで着替えを始める。


物心ついた頃からずっと着物を着てはいるけれど、私は幼稚園のころからずっと制服のある学校に行っていたので、毎日を着物で過ごしていると学友に思われたことはない。想像だってできないだろう。

友達と遊ぶ時も勿論着物だった。といっても、学校の友達とは遊ばなかった。いや、遊べなかった。毎日がピアノと修行で忙しくて、友達とも遊ぶ時間がなかった。いや、そんな時間を与えられなかったのだ。


しかし、全く遊ばなかったというわけではない。近所に住んでいる幼馴染の乙葉とウサギは別だ。彼らとはずっと仲良く遊んでいる。彼らがいなければ、私はずっと一人だった。


っと、おばあちゃんが晩ご飯を温めてくれているんだった。それを思い出して、ささっと着替えてリビングへと向かった。




「わぁ…」

テーブルに並ぶ美味しそうな料理の数々に感動してしまう。だって、湯気が、湯気が上っている。こんな、こんなに遅い時間に帰ってきたのに…


「さ、温かいうちにお食べ。」

優しく微笑んだおばあちゃんの優しさに涙がでそうになる。


私はテーブルの椅子に座った。あ、そうなんです。リビングや台所はフローリングなのです。何てったって古く見える家だけれどリフォームしてるからね!