天使のアリア––翼の記憶––

けれど、私はその言葉に納得はしていなかった。


「本当に、そうでしょうか……」


ウサギは、すごくすごく傷ついてしまうのではないか。

けれどその傷ついた心を胸の奥に仕舞い込んで、笑顔の仮面で覆い隠して、周りから分からないようにしてしまうのではないか。

そう思うと胸が痛い。

そうさせるのが自分だということも、すごく辛い。


「大丈夫。彼は決して独りではない。お友達だって沢山いるだろうし、仲のいい幼馴染だっているわ」

幼馴染という言葉で乙葉の顔が浮かんだ。

ふんわりした、可愛らしい笑顔の乙葉。

その優しい雰囲気で全てを優しく包み込んでくれる。

…乙葉なら、きっとウサギをフォローしてくれるだろう。


「それに、ウサギ君は月子ちゃんが無理していることの方が、自分が傷つくことよりも、もっと嫌だと思うんじゃないかしら」

「え…?」

私は首を傾げた。

どういうことだろうか。


「貴方達は本当に仲良しだってことよ」


ふふ、と目を細めて七星先輩は笑った。


「貴方達は同じなのよ。同じことを考えているの」

「同じ、こと?」

えぇ、と七星先輩は言った。

「月子ちゃんがウサギ君を傷つけたくないと思うのと同じくらい、ウサギ君も月子ちゃんに傷ついてほしくないと思っているの」

北斗先輩が腕を組んで頷いた。

「だから、ウサギ君は竹取会の脅威から月子ちゃんを守ろうと、必死に戦おうとしている。月子ちゃんを守るために、彼は剣を持ち、ピストルまで使いこなすことを決めた。実際、剣も銃も相当使いこなしているでしょう? かなり強いんじゃないかしら?」

忘れもしない、あの日。

一番最初に、私が竹取会に襲われたあの日、ウサギはどこからともなく取り出したピストルを使いこなして、私を竹取会から守ってくれた。

ありがとう、とお礼を述べても、

『幼馴染だ、当たり前だろ?』

ウサギはそう言って笑っていた。


でも、それは決して、"当たり前"なんかじゃない。

当たり前なんかじゃなかったんだ。