「良かったわ。本当に、良かった」
「え?」
先輩は、嬉しそうに目を細めている。
「どういう意味ですか?」
そう言ってもニコニコ笑って何も言ってくれない先輩。
「…先輩、私にも教えてください」
何かしら、と先輩の声が聞こえた。
「先輩は…先輩達は、どうして歌姫を手に入れようとしているんですか? 先輩達は魔法使いでしょう? 歌姫がいなくたって、何だってやろうと思うことはできるんじゃないですか? 願い事だって、簡単に叶えられるんじゃないですか?」
私達の座るベンチの向かいで咲く、青い紫陽花。
先輩は盛りが少し過ぎたその花を愛おしそうに見つめていた。
「私達魔法使いは、月子ちゃんが想像しているような万能な存在ではないわ。神様のように全知全能なわけではないもの。そりゃ、月子ちゃん達人間よりは優れている面もあるかもしれない。けれど、だからと言って全てが思い通りにできるわけではないのよ」
それに、と言って先輩は私を見た。
「私達が歌姫を手に入れたい理由は…」
「七星」
その時、低い声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。
七星先輩は驚いたように小さな声でその人の名前を呟いた。
「…北斗…」
見ると、北斗先輩がいた。
眼鏡を外して、威厳のある紅が私達を見下していた。
「北斗先輩!? 部活はどうなさったんですか? 今日も美術部って活動しているんじゃ…」
今日、部活があるんだ、と乙葉が話していたのを思い出した。
けれど北斗先輩は私の言葉を丸っきり無視して、ただ七星先輩を見つめている。
七星、と呼んだ北斗先輩の声は、怒っているような、なんだか厳しい声色だった。
暫く七星先輩を見ていたが、私を一瞬見ると、また七星先輩を見た。
「…僕が話す。七星、黙ってて」
「そう。分かったわ」
七星先輩は少し笑った。
どこか憂いを帯びた微笑みを浮かべて。
「え?」
先輩は、嬉しそうに目を細めている。
「どういう意味ですか?」
そう言ってもニコニコ笑って何も言ってくれない先輩。
「…先輩、私にも教えてください」
何かしら、と先輩の声が聞こえた。
「先輩は…先輩達は、どうして歌姫を手に入れようとしているんですか? 先輩達は魔法使いでしょう? 歌姫がいなくたって、何だってやろうと思うことはできるんじゃないですか? 願い事だって、簡単に叶えられるんじゃないですか?」
私達の座るベンチの向かいで咲く、青い紫陽花。
先輩は盛りが少し過ぎたその花を愛おしそうに見つめていた。
「私達魔法使いは、月子ちゃんが想像しているような万能な存在ではないわ。神様のように全知全能なわけではないもの。そりゃ、月子ちゃん達人間よりは優れている面もあるかもしれない。けれど、だからと言って全てが思い通りにできるわけではないのよ」
それに、と言って先輩は私を見た。
「私達が歌姫を手に入れたい理由は…」
「七星」
その時、低い声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。
七星先輩は驚いたように小さな声でその人の名前を呟いた。
「…北斗…」
見ると、北斗先輩がいた。
眼鏡を外して、威厳のある紅が私達を見下していた。
「北斗先輩!? 部活はどうなさったんですか? 今日も美術部って活動しているんじゃ…」
今日、部活があるんだ、と乙葉が話していたのを思い出した。
けれど北斗先輩は私の言葉を丸っきり無視して、ただ七星先輩を見つめている。
七星、と呼んだ北斗先輩の声は、怒っているような、なんだか厳しい声色だった。
暫く七星先輩を見ていたが、私を一瞬見ると、また七星先輩を見た。
「…僕が話す。七星、黙ってて」
「そう。分かったわ」
七星先輩は少し笑った。
どこか憂いを帯びた微笑みを浮かべて。


