目覚まし時計の音で目を覚ませば、辺りはまだ暗かった。

けれど時計を見るとしっかり朝6時を示している。

やっとの思いで目覚まし時計を止め、カーテンを開けた。

空には暗い灰色の雲がかかっていて、今にも雨が降りそうだ。

「…はぁ…」

まるで、私の心と同じ。


昨日は、なかなか寝付けなかった。

ウサギの言葉が頭の中で乱反射して、とても寝付けるような心境じゃなかった。

気が付いたら寝ていたけれど、おかげで変な夢まで見ちゃったし。

5歳くらいのウサギと乙葉が笑顔で私に手を振る、というただそれだけだったのだけど。

きっと、記憶を思い出してしまったのだろう。

ウサギが私に、変なことを言うから。

あぁ、もう。

ウサギのせいで寝起きは最悪だ。


制服に着替えて、居間へと向かう。

「おはよう。あら、月子、目の下酷いクマじゃないか」

台所で朝食の準備をしていたおばあちゃんが心配そうに言った。

「おはよう。そんなに酷い?」

「真っ黒だよ。あんた、そんなに遅くまで勉強してたのかい? 感心するねぇ」

感心するとか言いながら、目を見開いているおばあちゃん。

よほど私が勉強することが信じられないと言うのか。いや、私は勉強などしてはいなかったのだけど。

「いや、違うけど……」

私は、ハハと苦笑いした。

「何か、寝付けなかっただけ」

「そうかい。てっきり遅くまで勉強したのかと思って、あたしゃ驚いたよ」

あははと笑ったおばあちゃんが、私の分の朝食を持ってきてくれた。

「私に限ってそんなことがあるとでも?」

そう言いながら私は食卓の席に着いた。

「あるわけないねぇ」

おばあちゃんは納得したように頷きながら言った。

「…そんなはっきり言わなくたっていいんじゃない?」

いただきます、と手を合わせながら横目でチラリとおばあちゃんを見る。

「月子だってそう思ってるだろう?」

おばあちゃんが茶目っ気たっぷりに笑いながら、私の向かいの席に座った。

全く、年を重ねてもお茶目な人だ。

「それは、その…」

けれど反論はできないので、もごもごと口ごもりながら、ご飯を口に運ぶ。美味しい。

「いいから早く食べな。ゆっくりご飯を食べて遅刻したって、あたしゃ知らないよ」

そう言いながらおばあちゃんは席を立った。その様子さえ気品に溢れていた。

「はーい」

返事をしながら、私は味噌汁を啜った。