ドクンドクンと大きな音を立てて心拍している。

さっきのウサギの言葉は本当なの?

嘘じゃないの?

また明日学校で会えば、『冗談に決まってんだろ。何? 信じたわけ? 馬っ鹿だなー月子は』とか何とか言ってからかうんじゃないの?

そう思いたくて、だけど、どうやってもできなかった。

ウサギの真剣な顔が頭を支配している。

他のことを考えようとしても、ウサギがでてきて思考回路を占拠するから何も考えられやしない。

あぁ、もう。


「意味が分からない…」


雨が降る中、私は立ち尽くした。

空から降り注ぐ冷たい雨が、取り残された私を濡らす。

寒さも感じるけれど、それどころではなかった。



『ずっと前から月子が好きだった』



ショートした頭の中ではウサギの言葉がやまびこのように響いている。


「わけが、分からないよ…」

呟く言葉は雨と共に流れていく。


こんな時間帯に、しかも雨が降る中、傘もささずに外にいるのは当然私しかいない。

青い街灯が所々でぽうっと光っているけれど、映し出すのは建物の影ばかり。

人を見かけないこともあって、拠り所のない孤独感に襲われる。

梅雨の黒い雨雲が、ウサギも乙葉も全てを包んで隠して、私を独りにしてしまったような、そんな感覚に陥った。