天使のアリア––翼の記憶––

「だったら何だって言うんだ!」

男は苛立ちながらそう言った。

今にも引き金を引きそうな殺気さえある。

先輩達を、撃たないでほしい。

強く強く、そう思った。

心配で、不安で、胸がいっぱいになる私のことなど知らない先輩は、私の想像を遥かに超えることを言った。


「ということは、貴方達は若旦那派ではなく、旦那派なのね?」


ニコッと笑った先輩の目元は、やはり妖艶だった。


「な!?」

男達の顔色が変わる。

「あら、どうして知ってるのかって? それを知らないという方がおかしいわよ。そのくらいに貴方達は有名なんだから」

七星先輩は流れるように言葉を紡いていく。


「歌姫を望む者の間では、ね」


あぁ、やっぱり。

先輩達も、そうだったんだ。

歌姫を、望んでいるんだ。

私達や、竹取会と同じように。


「てめぇ!」

男が引き金を引いた。パンと乾いた音が鳴る。

それと同時に、七星先輩は15cmほどの細い棒を取り出して叫んだ。

「"ストップ"!」

その瞬間、音が消えた。

さっきまで風に揺れていた木々が、風に舞う落ち葉が、そのまま静止している。

まるで時が切り取られたような感覚。

「何もかも、止まってる…」

「なに、これ…」

ウサギも乙葉も、訳が分からないという顔をして辺りを見渡している。

「てめぇ、何をした!?」

男達も戸惑っているようで、それを隠すように大きな声をだしていた。

「何をしたって…貴方達なら良く知っていると思うけど?」

ふふ、と不敵に笑う先輩。