天使のアリア––翼の記憶––

乙葉が一発撃つたびに、男が持っていた銃が、その体に街灯のオレンジを輝かせながら地面に落下していく。

お見事、としか言えないほど、鮮やかだった。

呆気にとられつつも、頭には疑問が浮かんでいた。

どうして乙葉がそんなものを使いこなせるのさ…。

あ、そう言えば乙葉は銃が得意だと、初めて竹取会に遭遇したときにウサギが言っていたっけ。

あの時はあまり納得していなかったけど、今なら分かる。

私はこういうことに詳しくはないどころか、ド素人だけど。

相当乙葉は上手なんだと思う。


「この小娘がぁっ!」

男が懐からもう一丁ピストルを取り出して、乙葉に向ける。

その手元は、先ほどの乙葉の攻撃のせいか、血が薄っすらと滲んでいた。

「まだ持ってたのー? 面倒だねー」

溜息を吐きながら、乙葉は片手でピストルを構え、撃った。

繰り出された弾は、男の頬を掠った。その頬からは赤い血が滲んだ。

「あはは、小娘にやられちゃったねー?」

クスクスと乙葉は笑った。

味方なのに、どうしてだろう。恐ろしいと思った。

「一発掠ったくらいで調子のんなよ、小娘が!」

「調子には乗ってないよー? ただ撃っただけー。それにさー、少しは感謝してよねー? さっきのは"わざと"外してあげたんだからー。本当だったらー、今頃死んでたんだよー?」

途中までは、ふんわりしたいつもの乙葉らしい口調だったのに。

死んでたんだよ。

その言葉には温度がなかった。

「クソがっ!」

向けられた銃口が、街灯の灯を受けて煌めいた。

一歩詰められ、私達に緊張が走る。


もう、これで死んでしまうかもしれない。

もう、ここで私の人生終わるのかもしれない。

恐怖が全身を駆け巡る。


乙葉はギュッとピストルを強く握った。


「降参しな、小娘ども!」

男が強い口調で言った。