天使のアリア––翼の記憶––

「……そんな弱い弾丸一発くらいで、私を殺せると思ってるとー……痛い目見るよ」

そして乙葉はピストルを、先ほど乙葉に向かって撃った男に向けて撃った。

乙葉が持っていたピストルから繰り出された乾いた音とともに、男が持っていた銃が宙を舞う。

ガチャン、とまるで玩具のような音を立ててアスファルトに落ちた。

「な…!」

男は驚愕の表情で乙葉を見る。

「…じょ、嬢ちゃん、か弱そうに見えてピストル使えんだねぇ…」

余裕そうな素振りを見せているが、隠しきれていない。全然余裕なんてないことが、見て分かる。

「使えるー? 何を言っているのー?」

乙葉の声に緊張感はなかった。

ピストルを持った、危ない男5人に囲まれて、どうしてこんなにまで平常心でいられるのだろう。

「馬鹿なこと言わないでよー。冗談のつもりなのかは知らないけどー、ぜーんぜん笑えないよー? 冗談言うならー、もっとマシなことをいいなよー」

それにー、と乙葉は言葉を続けた。

「私は使えるなんてレベルじゃないのー。あんた達と一緒にしないでくれるー?」

いつも通りの口調で話す乙葉なのに、いつもとは違う雰囲気を感じて、私は不思議な感じがした。

凛とした雰囲気を身に纏っている乙葉は、かっこいいと思うと同時に、少しだけ怖いと思った。味方であるはずなのに。

「私と銃はー、一心同体なんだからー」

そして乙葉は銃を1発撃った。

パン、と乾いた音が鳴り響く。

けれど、連続してあちこちから聞こえる。

敵がこちらに向かって撃っているのだと悟ると同時に、私はとっさに手で頭を覆って下を向いた。

これに当たると一発で死んでしまう。そう思うと、体が強張った。

大丈夫ー?という、聞き覚えのある、あの気が抜けるような声が聞こえてハッと顔をあげると、いつもどおりの優しい笑顔をした乙葉がこちらを振り返って見ていた。


「安心してー。月子のことは必ず守るからー!」


乙葉が私を庇うように片手を広げた。

もう片方の手では黒いピストルを握っている。

それは乙葉の白い華奢な女の子らしい手と対照的なのに、妙に乙葉の手に馴染んで見えた。


「少しの間、耳を塞いでいてねー」


私にそう言うと、乙葉は右から5発連続して撃った。