天使のアリア––翼の記憶––

その瞬間、乙葉が私を庇うように私の前に出て手を広げた。

「嬢ちゃん、そこをどきな。俺らはそいつに用があるんだ」

そいつ、というのは私のことらしい。男の1人が乙葉を見てそう言った。ニヤリと口の端に気味の悪い笑みを浮かべている。

「……私に何の用ですか」

勇気を振り絞って私がそう言うと、奴らは私に視線を移して人の悪い笑みを浮かべた。

「大した用じゃねぇよ」


そして4、5人の彼らは私達を囲んで、


「お前に、死んでもらおうと思ってな」


銃を、構えた。

辺りに緊張が走る。

「そこの可愛い嬢ちゃん、怪我したくないなら言う事を聞いた方が身のためだ。そこをどきな」

乙葉は下を向いたままだった。

下を向いたまま、動かない。

「嬢ちゃん、言うことを聞きな。俺達だって可愛い子は殺したくねぇんだ」

男がピストルを乙葉に向ける。

「それでも嬢ちゃんがどかないって言うなら、問答無用でその娘ごと殺すけどなぁ!」

男がそう言ってピストルを構えたと同時に、乾いた音が響いた。

ピストルから繰り出された銀の弾丸が男の頬を掠って、その奥の壁に突き刺さっている。

何が起こったか分からず辺りを見渡すと、乙葉がどこからか取り出したピストルをその男に向けていた。

ピストルの銃口から煙が上っていて、どうやら乙葉が撃ったらしい。


「……私を殺す…?」


乙葉は下を向いたままだった。


「……よく、そんな弱いピストル構えてそんなことが言えるねー…私をただの小娘だと思ってるんでしょー…?」


乙葉は掠れた声でそう言った。顔を少し上げている。


「…じ、銃も使いこなせないくせに、ハッタリかましてんじゃねぇよ、この小娘が! 一発撃っただけで勝った気になってんじゃねぇ!」

男が銃で乙葉を撃つ。

パン、と乾いた音がするが、乙葉は私庇ったまま、ひらりと可憐に、難なく交わした。

ふわりと、乙葉の胡桃色のサラサラな髪が風に舞う。