天使のアリア––翼の記憶––

「そう言えばー、デューク先輩とも一緒に見ていたんだけどー、いつの間にか帰っちゃっててー」

挨拶できなかったなー、と乙葉は眉を下げた。

「へぇ。デューク先輩のことだから、どうせ藍羅先輩にサプライズか何かしようと企んでいるんじゃないの」

例えば、花束を渡すとか、一緒に帰ろうって言うとか。

デューク先輩なら、しそうだ。

「なるほどねー」

乙葉も納得したように頷いた。

「あ、そうだ、乙葉」

私が思い出したようにそう言うと、乙葉は「何ー?」と首を傾げた。

「明日提出の数学の宿題ってした!?」

「数学ー? したけどー?」

それがどうしたの、とでも言いたそうに、キョトンと不思議そうに私を見る乙葉。

「本当!? あの問題、難しかったよね! 問3だけがどうしても分からないです教えてください!」

私は乙葉の方を向いて手を合わせ、お辞儀をした。その角度は直角である。

乙葉は、あぁ、と納得したような晴れやかな顔になって、

「勿論ー」

目を細めて微笑んでくれた。

「後でうちにおいでよー。教えてあげるー」

「助かります乙葉様!」

そう言って笑い合いながら、角を曲がったその時。







「よぉ、華原月子」






黒いスーツに、黒いサングラス。

柄の悪そうな男達に囲まれた。


そいつらは、言うまでもなく、


「竹取会……」


彼らだった。