天使のアリア––翼の記憶––

次々に奏でられる演奏に、私はすっかり魅了されていた。

「すごい…」

同じ高校生なのに、あんなにも堂々と演奏していることが本当に凄いと思った。

眩しいライトを体中に浴びて奏でる音楽は、やはりキラキラと輝いていた。

それはまるで、春の木漏れ日のように。

夏の水しぶきのように。

秋の夕日の残光のように。

冬の夜明けの朝陽のように。

心に届いて、キラキラ輝く。


「演奏に聞き入るのもいいけれど、そろそろあたし達の本番だ」

先輩の声ではっとして先輩を見るけれど、先輩は私のことなど見ていなかった。

先輩の見つめる先にあるのは、観客の視線が集まる光にあふれたステージ。

眼差しは真剣だけど、表情は柔らかい。

あぁ、"孤高の歌姫"だ。

先輩は完全に、スイッチが入っている。


「ありがとうございましたー!」

私達の前の出番だった演奏者が頭を下げて観客にお礼を述べる。

わぁっと盛り上がる歓声と大きな拍手が会場を包み込む。

演奏者は満足そうにもう一度お辞儀をした。

そんな姿を微笑ましく見守っていると、徐々にステージのライトが消え場内が暗くなる。

そして会場はセピア色にも似たダークオレンジに包まれる。


緊張と興奮を兼ね備えた空間。

ここに藍羅先輩の歌声が、私のピアノが、響き渡るのだと思うとワクワクする。


すると先輩が言った。


「今日も楽しもう」


艶っぽい微笑み。

老若男女を問わず魅了する笑顔。


「私のピアノは先輩の為に」

私は微笑み返した。


今日も素晴らしい演奏を、届けよう。