天使のアリア––翼の記憶––

「あら! 藍羅、貴女メイクも何もしていないじゃない!」

七星先輩は叫ぶように言った。

「え? あ、あぁ」

藍羅先輩は驚いたように返事をした。

「あぁ、じゃないでしょう! いいわ、私がしてあげる」

七星先輩はそう言いながら、藍羅先輩を鏡の前に座らせて、髪をいじりだした。

「じゃあ、俺達はもう客席に戻っています」

ウサギが慣れない敬語で話す。なんだか別人みたいに感じられて、不思議な感じがした。

乙葉はなにも離さないが眉を下げて微笑んでいる。

その乙葉の様子を見て、ウサギが言った『俺達』には乙葉が入っていることに気づいた。

その時チクリと少しだけ胸が痛んだ。

何だか二人との距離を感じてしまった。

実際はそんなこと、ないはずなのに。

「じゃあ、俺も戻ろうかな」

おもむろにデューク先輩が言った。

「…僕も」

北斗先輩が眠そうにそう言った。北斗先輩はどうして、そういつも自由なのだろう。

そうしている間にも、藍羅先輩がより一層美しくメイクアップされていく。

七星先輩の器用さに脱帽する。

「これで、大丈夫ね」

満足そうに七星先輩が言った。

藍羅先輩を見て見ると、言葉を失った。

「月子?」

藍羅先輩が心配そうに尋ねる。

「……す」

「え?」

「綺麗すぎます! なんですか、それ! なんでこんなにまで綺麗なんですか!」

私はもう、現実か空想か、見分けがつかなかった。

なんでこんなにも、綺麗なの。

なんでこんなにも、美しいの。

なんでこんなにも、麗しいの。


疑問が産まれるほど、先輩は美しすぎた。

同時に思う。

これは、まずい。

気絶する人が、続出してしまう。