天使のアリア––翼の記憶––

「わぁ、北斗先輩、七星先輩、ありがとうございます!」

私は深々と頭を下げた。

「…別に」

「当然のことでしょう? だって、大好きな友達と後輩のハレ舞台だもの」

北斗先輩はかすかに微笑んでいたがほぼ無表情で、七星先輩は花が咲くような笑みを浮かべていた。

「藍羅もめちゃくちゃ可愛いわね。って、話聞いてるの?」

七星先輩が話しかけるのだが、藍羅先輩はショートしたままだった。

「あ、藍羅先輩はデューク先輩の訪問に思考回路がショートしているので」

私は半分呆れながら答えた。

こんな状態になっているのに、まだ自分の気持ちに気づいていないんだから、そりゃ呆れもする。そこが可愛いところでもあるのだけれど。

「へぇ、そうなんだ。本当に可愛いね、藍羅は」

デューク先輩が美しい微笑みを浮かべている。

あなたのせいですよ、あなたの。

「本当に可愛いですよねー。私、憧れますー」

乙葉が目を輝かせながら言った。

確かにその気持ち、分かるけれど。

「本当よね。可愛すぎるわ」

七星先輩まで頷いている。

「いや、もう、あなた方は充分美しいかと思いますが」

私は言った。これ以上美しくなったら、困る。きっと顔を見るだけで気絶する人が出る。

「いつもの藍羅も可愛いけれど、今日はいつもの数倍可愛いよね。ドレスがよく似合っているし」

デューク先輩は目を細めて言った。

「デューク先輩、もうそれ以上藍羅先輩に何か言わないでください。本番に支障がでます」

イチャイチャを見るのも(見せつけられるのも)、もう勘弁だ。

「えー?」

あからさまに残念そうな顔をしたデューク先輩。

「でも、月子ちゃんがそう言うのなら、仕方がないかな。本番があるんだもんね。本当はもっとイチャイチャしていたいんだけどなぁ…」

「い、イチャイチャなんて、誰がするか!」

藍羅先輩が叫ぶ。

「あ、藍羅。さっきの話、聞いてた?」

デューク先輩がにこにこ笑顔で尋ねると、藍羅先輩は首を傾げた。


「いつもの藍羅も可愛いけれど、今日はいつもの何倍も可愛いねって言ったんだよ」


藍羅先輩が顔を真っ赤にしてショートしたのは、言うまでもない。