天使のアリア––翼の記憶––

「ふーん、そうか」

藍羅先輩はすんなりと納得してくれた。

きっと何かあるんだろうけどそれを言いたくはないんだな、なんてことは思っていないらしい。微塵も考えてなどいないだろう。

私はそれに驚いた。

藍羅先輩、何でそんなに簡単に人を信じちゃうんですか!?

純粋ですか!? 純粋ですね!!

「ほら、いつまでもぼーっとしてないで行くぞ」

「…はい…」

純粋すぎる藍羅先輩に圧倒されつつもホールへと向かった。





「…ということで、今日のコンサートの概要はこんな感じですな」

毎度おなじみの館長さんから今日のコンサートについて説明があった。

あの副館長さんは出張中なんだって。藍羅先輩の敵となりそうな人物がいなくて心から安心した。


今日のコンサート_『高校生音楽フェスティバル』は全部で2時間、出演者は総勢16組のコンサートなんだ。

ジャンルは制限されていないので、クラシックからジャズまである。

しかも、出演者は全員高校生なんだ。

何でも、『高校生音楽フェスティバル予選会』というものが先月行われたらしく、そこで勝ち上がった15組のグループと、大会委員長推薦枠で出場することになった藍羅先輩が、各々の演奏を披露するという、とても面白い演奏会。

因みに、藍羅先輩を推薦してくれた大会委員長さんというのが、

「何か質問でもありますかな?」

この、ジェーン・ビオラ・ホールの館長さん。

館長さんは右手で眼鏡を少し外しながらチラっと私達を見た。

私達は二人そろって首を横に振る。

事前にあれだけ詳しく説明があった上に、今日も説明されたんだからもうこれ以上質問なんてないだろう。

「今日の演奏、楽しみにしておりますぞ」

ホッホッホ、と優しく笑いながら、館長さんは私達の楽屋を後にした。


藍羅先輩はまだ資料に目を通している。

「何か気になることがあるんですか?」

私が尋ねると資料から目を離した先輩が、タイムテーブルを指さしながら言った。