天使のアリア––翼の記憶––

『近々コンサートでもあるの?』

『あ、はい、そうなんです。実は今週の土曜日に』

『そのコンサートって、もしかして、駅前のコンサートホール?』

顎に手をあて、首を傾げて尋ねる先輩。

だから、なんでそう、可愛いんですか先輩は。

『そうですよ。詳しいんですね』

『たまたまポスターを見ただけだよ』

先輩は爽やかに微笑んだ。

この笑顔が老若男女問わず魅了するんだよね、と思いながら白い目で見ていた。

そしてデューク先輩はその笑顔で、爆弾発言をしてくれたんだ。


『俺、そのコンサート見に行くよ』


その言葉に顔を真っ赤にして絶句した藍羅先輩。

…そして、今に至ると。



「もしかして、照れてるの? ほんと藍羅って可愛いー!」

「だからふざけたこと言うな!」

「全く、藍羅は照れ屋だもんねー。ねー、月子ちゃん?」

話を振られて一瞬びっくりした。

「そうですね。すぐ照れ隠ししますからね」

といっても、デューク先輩にだけ、だけれど。

「て、照れ隠し!? あ、あたしが!? い、いや、て、照れてないから! 絶対照れてないから! つ、月子までおかしなことを言うなよ!」

だって本当ですし、と私は笑いながら答えた。

これのどこが照れ隠しでないのか教えてもらいたいくらいだ。

デューク先輩に暴言を吐き続ける藍羅先輩を眺めながら溜息をつきながら、私は肩にかけていたスクールバックから茶封筒を取り出した。

そしてその中から1枚の紙切れ取り出すと、デューク先輩に渡した。

「これは?」

首を傾げる先輩に微笑んだ。

「コンサートのチケットです。良かったらいらしてください」

ありがとう、と爽やかに微笑むデューク先輩の隣で、藍羅先輩は更に顔を赤くして絶句していた。





隣で歩く藍羅先輩は顔をリンゴの如く真っ赤にしたまま、ぼうっと歩いている。

熱があるのかと一瞬思ったが、すぐに間違いだと気づく。

原因は、分かっている。

「藍羅先輩ー? いつまで顔を真っ赤にしているんですかー?」

そう呼びかけてみると

「まっ真っ赤!? なのか!?」

「はい」

「そ、それは、た、多分、き、き、気温! そう、き、気温が高くて暑いからだと思う!」

「…そうですか」

本当は別の言葉を言いたかったのだけど、やめた。

この超絶鈍感な先輩に言っても仕方がない。

藍羅先輩は「そ、そうだ!」と答えた。

私はそんな先輩を見て、ばれないように小さく溜息をついた。