天使のアリア––翼の記憶––

ぐるぐると巡る思考はウサギでいっぱいだった。

さっきからウサギのことばかり考えている。

頭がウサギでいっぱい、だなんて、恋する乙女か!と突っ込みたくもなる。

けれど突っ込んだところで、頭の中はやはりウサギで溢れていた。

ウサギの言葉が頭の中で響いて思考を占拠する。

『俺はお前が可愛くないと思ったことはない』

それって、つまりは可愛いってこと?

どういうつもりでそんなことを言ったんだ。

いや、深い意味はないだろう。

きっと可愛いといっても、顔面偏差値で言えば47ではなくて52くらいだ、という意味で言ってくれたのだろう。

きっとそうだ。

いや、そうしかない。


だから、違う。

そういう意味じゃない。

決して違う。

そんなわけがないんだ。


私は自分に言い聞かせて廊下を走った。

けれど私の頭はパニック状態で、心臓がドクドクと音を立てて心拍していた。






「嫌だ! 絶対来るな!」

「えぇー? いいでしょー? 見に行きたいんだもん。それに、俺は、いつだってどんなときだって、藍羅のことしか考えられないくらい好きなんだよ? 一日中一緒にいたいくらいなのに」

「ばっ何を言っているんだ、お前は! よくそんなことを恥ずかしがることもなく言えるな! 男のくせになんて女々しいんだ!」


どうかお願いします。

誰か、このバカップルを止めてください。


藍羅先輩と廊下で合流し、一緒に音楽室に向かおうとしたら、この始末。

目の前で広がるピンクな世界に、はぁ、と溜息をついた。

実は音楽室に向かう途中にデューク先輩と遭遇して話しかけられたの。

『これから練習なの?』って。

きっと藍羅先輩は顔を真っ赤にしてそっぽを向いているだろうから、先輩は答えないだろうと思って、私が『そうなんです』って返したんだ。

そしたら先輩が感心したように、へぇ、と言った。