天使のアリア––翼の記憶––

そして先輩の歌声が、会場いっぱいに響き渡る。この場にいる全ての人が魅了される。聞き入っている。

あぁ、本当になんて綺麗な歌声なんだろう。何度聞いても感動する。


天使の歌声は全てのお客様の心に響き、皆涙を流して感動していた。




そしてすべての曲を歌い終わった後、今日はありがとう、なんて先輩が微笑むものだから、先輩が登場した時と同じ、もしくはそれ以上に大きい拍手が会場から湧き出ていた。スタンディングオベーションである。

それに応えるように先輩は更に優しく微笑んだ。

その瞬間ドタバタと客席から物音がした。どうやらお客様の何名かが先輩のさっきのスマイルやられたらしい。先輩の笑顔は最早凶器だ。

この音からして、10人ほど倒れたようだ。私はどうやら先輩にジュースを奢ってもらえることになりそうだ。






「いやぁ、今日も素晴らしかったですなぁ。」

鼻の下をこれでもかと伸ばしている副館長さん。そんな汚い手で先輩に触ろうものならこの私が許しませんよ。


数分前、楽屋でのんびりしていると、応接間に呼ばれた。そこに行くと館長さんと副館長さんがいたんだよね。


勧められて先輩と共にソファに座った。その前のは机があり、その向こうに館長さんと副館長さんが座っている。


「ありがとう。これも館長のお陰だ。礼を言う。」

「何を何を。我らのホールでこんなにも素晴らしい演奏をしてもらえたのですぞ。こちらこそ礼を言いたい。」


ニコニコしている館長さん。こちらには好意が持てる。


「そういえば今日もお客様の数名が倒れられてな、病院に搬送したのだよ。」

「え?」

先輩は驚いておられるが、私はやっぱり、と思った。全ては先輩の美貌のせいだ。美しすぎるって罪だ。


「12人も倒れられてな、救急車が足りるかどうか、大変だったよ。」


館長さんは楽しそうに話しておられる。館長さん、笑い事ではないですぞ。でも12人ってことは私、やっぱり先輩との賭けに勝った!わーいやったジュース!