「おにいちゃんね、いつもえがおなの。すごくね、あかるくて、たのしそうで、まるでね、おひさまみたいなの」

本当にお兄ちゃんが大好きなんだね、と声をかけると頷いた。

「だいすき。おにいちゃんも、おとうさんも、おかあさんも、みんな、だいすき」

本当にいい子だ。本当に純粋で、真っ直ぐで。

こちらの心が洗われる。

「お父さんもよくここに来るのか?」

藍羅先輩が尋ねると、ディナちゃんは首を横に振った。

「おとうさんは、たまにきてくれるの。おとうさん、おしごと、あるから…いそがしいって。だから、おにいちゃんみたいに、まいにちきてはくれないけど、ここにきたときはね、いつもやさしいかおしてるの。はやくげんきになれ、って、あたま、なで、て、くれ、るの…っ」

涙が滲んで声が震えるディナちゃんの背中を撫でた。

「でもね、おにいちゃんとおとうさんがあったときはね…」

ディナちゃんの涙がさらに溢れる。

「…けんか、す、るの…」

「喧嘩?」

あの写真に写っている優しそうな二人が?

あの、ディナちゃんのお父さんとお兄さんが、ディナちゃんの居る前で、喧嘩?

「ふたりともね、いつもすごくやさしいのにね、すごく、こわくなるの…おとうさんがね、おにいちゃんをこわいかおでどなるの。でね、おにいちゃんも、こわいかおしていいかえすの…」

「どうして喧嘩するんだ?」

藍羅先輩が私とディナちゃんの隣に座った。

手には水色のフレームに入った、ディナちゃんの家族写真があった。

「よく、わかんないけど…たぶん、ディナの、びょうきのこと…」

顔は見えないけれど、きっと今、暗い顔をしているのだろう。

この子はいい子だから、きっと自分を責めている。

自分のせいで、二人の仲が悪化したんだ、と。

「ふたりにね、いったの。もうけんかしないでって。なかよくなって、って。またむかしみたいにかぞくでなかよくしようって。

でもね、そうしたらね、ふたりとも、すごく、こまったかおでわらうの。それでね、ふたりともね、やさしいかおしてディナのあたまをなでて、いうの。

ディナがわらっていてくれたらいいんだよ、って…」


「ディナちゃん…」