力説する私に苦笑いをした先輩。

あぁ、どうして貴女様は苦笑いだけでこんなにも美しいのですか…!

天使ですか、女神ですか!

今日の先輩は、淡い青の細いストライプのシャツに細身のジーパンを合わせていて、もう格好良すぎだ。極めつけに、その艶やかな御髪は白いレースの可憐なシュシュでポニーテールにしている。

爽やかさマックスなその格好は、決して派手派手しいわけではないのに、道ゆく人の目を引く。

目を引くどころか、振り返った人は皆藍羅先輩を見て顔を染めている。

そう、惚れたのだ。先輩は確実に一目惚れさせている。

しかし当の本人はというと、自分が美しいことも、通りすがりの人達が皆振り返って自分を見ていることも、まして惚れさせたことなんて全く気づいていないようだ。

そういうのに鈍いところが藍羅先輩らしいのだけど。

「あ、バスが来た。行くぞ」

先輩に続いてバスに乗り込み、目的地へと向かった。


バスに揺られること15分。大学付属病院前のバス停で降りて数分歩くと目的地に到着した。


目の前には、そびえ立つ煉瓦色の巨大な建物。

その周りに生える木々の葉は太陽に煌き、一層その輝きを増している。

正面玄関へと続く屋根付きの道の左右に広がるは、黄緑の芝生の広場。そこには東屋やブランコ、滑り台までもが備わっており、街中にある公園と大差ない。

その脇で様々な花々が色鮮やかに凛と咲いている。手入れが隅々までゆき届いていることは、少し見ただけでも分かる。

「わぁ…」

なんと心洗われる風景。思わず感嘆の声が漏れる。

太陽の光が降り注ぐ、癒しの空間がそこにはあった。

「どうしたんだ?立ち止まるなんて」

数歩前にいる先輩が不思議そうに振り返る。

「あ、いえ、何でもないです!」

ふーん、と前を向いて歩き出した先輩の背中に追いつくため小走りだ。

どこに行っても私は走るのね。とほほ。