天使のアリア––翼の記憶––

「先輩が美しすぎるせいですよ。」


真剣にそうだ。先輩の美貌が世の男性のみならず、女の子達までも虜にするんだ。先輩の美しさは罪である。


「面倒臭いだけだ。しかし月子には毎回助けられているな。ありがとう。」

先輩が言ってるのは、私がスタッフさんから先輩を守るために上手く対応したこと。


「いえいえ、とんでもありませんよ。先輩と私の仲じゃないですか。」

そう言って笑うと、先輩もふわりと笑ってくれた。あー、もう素敵すぎる。


私は楽屋にある大きな鏡に全身を写した。やめておけば良かったと直ぐに後悔した。

似合ってない、と率直に思った。身長も標準的で、顔立ちだって童顔で平凡で。おまけに先輩みたいにナイスバディじゃないし。

はぁ、先輩はあんなにドレスが似合っているというのに、私ときたら、馬子にも衣装というわけでもない。ただドレスに着せられている感じがする。七五三かと思うほどだ。ただドレスが黒なので、辛うじて高校生らしさが保たれているくらい。


「今から本番なのに何故落ち込んでいるんだ?」

「いや、自分の寸胴さを惨めに思っていただけであります。」

先輩がスタイルいいから余計に、とは言えない。口が裂けることになっても。絶対無理。言うことを考えるだけで寒気がする。


「あたしは月子の髪に憧れる。」

「ふぇ…?」

わ、私の?この髪に?この黒いだけの、このありがちなボブに?なんで?

「黒髪って素敵だと思うけど?変に色がついているよりずっと。」

「そうですかー?」

あり得ない。